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ゴーストバスターズのKANIOのレビュー・感想・評価

ゴーストバスターズ(2016年製作の映画)
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アクションやコメディ要素はそこまで悪くないし、キャラクターに関しては完璧と言っていい程主要人物の誰もが魅力的に描かれている。
個人的にも、ケイト・マッキノン演じるホルツマンはお気に入りのキャラクターで、美人で格好良くて楽しくて超最高だったと思う。

しかし、オリジナル版に比べて内容で劣る点があまりに多すぎる。
オープニングの導入は完璧だったのに、誰もが待ち侘びていたであろうメインテーマを途中でフェードアウトさせたのには納得行かないし、そこからの脚本のテンポはもう最悪。
ダイジェストの使い方も下手糞だし、オリジナルメンバーのカメオ出演に関してはアーニー・ハドソン以外リスペクトの欠片も感じられない。
特にエンドロールは頭を抱える程の酷さで、オリジナル版や2の大団円とは程遠い、あえて言うならばアレこそが本当の「クソ」だ。

CGで表現されたゴーストは確かに光のパーティクルが綺麗だったが、オリジナル版以降続くホラーコメディで使い古された所謂”既視感の塊”のような物で、30年前の特殊効果で撮影されたマシュマロマンやテラードッグの方が迫力があるというのはどう考えてもおかしい。

今作に限らず、リブートやリメイク物を作るならオリジナルのメンバーはアイデンティティの再定義や新世代の若者へとバトンタッチする役に徹するべきだと考える人は多い。例えそれがカメオ出演であってもだ。
しかし、今作ではオリジナルキャストに対して内容的にも全くリスペクトが成されていない。
そういったカメオ出演や演出から見るに、言わせればコイツは「リメイク」でも「リブート」でもなく、ただのファンメイク映画だ。

まず、本作を制作背景と併せて語る上で欠かせないのが、前作以降から続いていた『ゴーストバスターズ3』を巡る騒動だ。
1989年の『ゴーストバスターズ2』以降、誰もが3の制作を望んでおり、10年後の2000年頃にはダン・エイクロイドが書いたとされる3の脚本がインターネットにリークされていた。
これにより3の制作が実しやかに「存在する物」として囁かれていたが、ビル・マーレイが続編の参加に否定的だということが明確になり、企画はボツとなった。
その後も2000年から2012年に至るまで、脚本の度重なる修正やキャスト陣との兼ね合い、キャスト選定の難航、制作の一時中断などから続編の制作は遅れに遅れ、
とうとう2014年にハロルド・ライミスの死去によりオリジナルメンバーの再集結は決定的に不可能となってしまった。
そして2009年に挙がった企画を何度も練り直して制作された本作は、映画史の中でも類い稀で複雑な騒動を巡る環境下の中で作られた作品となってしまった。

公開前から公式予告の下品なギャグ演出を見た熱狂的なファンからの批判の声が集まり、そこに併せてレイシストやフェミニストからの過度に理不尽な批判までもが出てきて、多くのネガティブキャンペーンが世に出回ってしまった経緯も持っている。
そういった公開前の情報だけ抜いても「理不尽な批判」と「的を射た批判」がごっちゃになっており、公開後も内容に関して多くの物議を醸している。

単純に「面白さ」を語るだけにしても、残念ながら本作は「感想」や「レビュー」として一筋縄では語れない。
贔屓目に見てしまうファンの意見と制作背景の雑念が入り混じり、あまりに長い時間をかけた末に多くの複雑な問題を抱える事となってしまった悲劇の一作。
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