このスコアは映画自体の評価というよりはセバスティアン・サルガドの人生とそれを克明に記録した写真に対して。
彼の写真集を実際この手に取った事があるがそれはあまりにも真の迫力と言おうか。
そのモノクロから命の鼓動を感じたのを良く覚えている。
冒頭鉱山の1枚から始まる。
このカットから何枚かを経て写し出されるサヘルの痩けた女性には美とそれ以外の深刻な問題が同居する事に衝撃を受けると思う。
そうやってこの人がカメラに収めてきた地球の息吹と悲しみが淡々と流れてくるのだがこの情報氾濫した世の中でも未知又は見ないふりをしていた物事がそれらの写真を通して"世界"に知り、触れれる。
映画は終始、彼の話だ。
彼の生い立ちから写真家としてのライフワーク、そして人類の共生と故郷の再生…
様々な命が奏でる一瞬のハーモニーを彼は掴んで離さない。
そして、私達は命とは何なのか、生きるのではなく生かされている事を痛感するわけで。
どのカットも痛烈。
特にサヘル〜ルワンダの大虐殺のそれは正視を躊躇う程に生々しく辛いがそれこそが現実という日本で生きる自分を苛んでしまう程の描写に己の魂が憂い、朧げながら魂の重み(或いは軽さ)を感じた。
そこから彼が生命の息吹に希求するのは生きる上で自然の摂理なのだと。
道徳的観念が渦巻くが、これこそが生であり死であり残すも絶やすもまさに自分次第なのだ。(或いは人類共通の課題でもある)
サルガドの写真にはそんな人間の根源を触れずにはいられない。
この作品はドキュメンタリーとして非常に価値があると思う。監督自身が感じた事を作品を通してぜひ"共有"してみて。