YukiSano

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.4
エヴァとは少年が童貞を捨てたら酷い目にあう青春残酷物語である。

胎内回帰を願う内向的な少年が居心地の良い場所から外の世界に無理やり出されて、社会を知り、女を知り、コテンパンにされる話だ。

唯一、角の生えた初号機は男性の象徴であり、妙に女性を連想させるような使徒と戦い、勝ったり、負けたり、取り込まれたりした。故にポジトロンライフルで社会的障壁を貫通させたりする。あれでシンジは「序」で童貞を捨てた。なので「破」では、女性に囲まれてウハウハ青春を謳歌するが、すぐに落とし穴にはまる。

無理やり押し付けられた仕事をこなし、女を知って社会的評価を得、上司や父親の言うことを聞いていたら良いと思っていた矢先、自分の意思はないのかと罵倒され、大切な女も傷つけてしまう。やり場のない怒りと、自己嫌悪で周りに当たり散らした後、仕事を放棄してしまうシンジ君。

十代の頃は分からなかったが、これは二十代辺りで青年が経験する通過儀礼の物語。色んな状況の童貞を捨てていくシンジ君の世界は広がるが心の傷も増え続けていく。心の壁であるATフィールドを突破してくる使徒達。社会的障壁の象徴でもあるし、女性とも取れる。

失恋というよりも肉体関係にいたった上での、もつれを表しているかのような痛みがある。レイとアスカと上手くコミュニケーションを取れていた時の高揚感。アスカとの別れ、綾波へのプロポーズ。まさに移り気な青春の暴走だ。

綾波との近親相姦的な匂いは消え、ひたすら優柔不断だった男がやっと一人の女を選んだように見える。

恋愛の高揚感と、その終わりの残酷さをロボットアニメとして見せる庵野秀明。どんな悲しい恋をしてきたのか分からないが安野モヨコと結婚したから「破」は、こうなったと答えていた。

思えばエヴァ旧劇場版は、アスカ役の宮村優子に庵野がフラれたからラストはああなったと言われていた。

ほんじゃ今回はプロポーズ編だとして、ラストは何故サードインパクトなのか?てかカヲル君に槍で刺されるというBL展開は意味が深い…

こんなに人気アニメなのに、個人的感情をブチ込みまくってくるエヴァンゲリオン。きっと皆が体験する恋愛の気持ち良さと気持ち悪さのコントラストが癖になるからに違いない。

青春だなぁ…
YukiSano

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