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ホワイト・マテリアルのkuritaのレビュー・感想・評価

ホワイト・マテリアル(2009年製作の映画)
5.0
2023年に観た映画の中で1番面白かった。観れて良かった。
また上映後の大寺眞輔さんによる解説がめちゃくちゃ良かったので以下メモ。

①本作は撮影がしやすいカメルーンで撮られた(ドゥニ自身が幼少期にカメルーンで過ごしていたこともある)が、2003年にコートジボワールで実際にあった出来事が元になっている。
しかし具体的な事件を元に作られているにも関わらず舞台や年代がぼかされており、寓話化された作品になっている。
もしコートジボワールで起きた出来事と分かる程度に具体的に描くならコートジボワールで撮影するべきであって、カメルーンで撮影してしまうと嘘になってしまう。作品やコートジボワールの人々に対して誠実であるべき、という監督の強い考えから意図的に寓話化して撮られている。

②ドゥニ作品の特徴として説明が少ない事が挙げられるが、本作はさらに顕著となっている。またドゥニの作家的アプローチとして⒈移動、⒉帰属、⒊断片化の3つが挙げられる。
ドゥニは幼少期から親の仕事の関係で様々な国を行き来してきた経緯がある。その為、何処にいても自分の居場所がない、帰る場所、帰属できる場所がない、全てがバラバラになって散らばっているという意識があった。その意識が本作にも現れて(作品で表現)している。
本作の主人公であるイザベル・ユペールは常に移動しており1つの場所に留まらない。また主人公自身もフランスへ帰っても居場所がないと感じており、しかしアフリカにいても現地に馴染むことができていない。加えて、彼女は作品中唯一の白人女性であり、家族間でも仕事上でも、もちろん地域でも同じ立場の人間が存在せず、帰属することができない。
そしてその状況を断片的なカットの連続、語り口も断片で表現している。バラバラの時系列、バラバラの場所、バラバラの家族、全てが散らばっていて留まることができない。
なお、移動に関しては権力や暴力の移動が背景で展開されている(フランス軍の撤退→制圧される反政府軍→暴徒の台頭→政府軍の独裁)。

③その他
後日まとめ
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