こぐまくん

ヒメアノ〜ルのこぐまくんのネタバレレビュー・内容・結末

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前作、”麦子さんと”はその年の私のワースト1でした。加えて漫画原作。濱田岳もまた似たような役柄だし…ただ、森田剛の演技は見たことなかったので、ここだけは結構気になるかな〜くらいのレベルで見ました。結果、めちゃめちゃ痺れた!!!なんだこれはっ!
ちなみに原作未読ですが、古谷実がどんな作風の漫画家かは大体知っております。

もう既に皆様書かれているよう、予告同様に映画がぱきっと二つに分かれており、青春映画が突如サイコスリラーに切り替わるあのクレジット!あそこだけでももう一回見たい…。まるで作った側の人間かのように、ざわつく会場に鳥肌をたてながら”うおー!!!いけいけー!”となりました。
隣に座っていた人が前半の終わりがけに恐らくお手洗いで席をたったのですが、彼が劇場の入り口に戻ってきた時には後半パートに切り替わっていて、あのBGMの中”え?”って感じで立ち尽くす姿に思わず笑ってしまいました。

容赦ない暴力描写。すごい。ここまでの邦画は見たことがないかもしれない。そしてそれをナチュラルにやってのけた森田剛、ほんとすごい。ファンの人に怒られるかもしれないけれど、ジャニーズとして若い頃からやってきたキャリアはこの日のためにあったんじゃないか?!ってくらい。ギャップ。しかも役名も”森田くん”だと?笑
学生時代の彼の描写は本人がやっているので、”さすがにそりゃないわ〜”と水をさされるかと思いきや、あまり正面から映さなかったり、上手く逃げていたように思う。もちろん”逃げ”の計算もあるし、”あの”シーンでの”死んだ表情”を際立たせる演出でもあるでしょう。だけど、学生時代の彼の顔があまり映らなくても、ぴちぴちのジャニーズ時代の彼を思い出して、自然とリアルに存在していた人間のように思えたから全然白けませんでした。そして現在の”森田くん”は劇中でも、現実でも歳を重ねている。まだまだ若いけど、あの頃とは確実に違う肌の皺ツヤ、髪の質、瞳…。彼の元々ちょっと腹の底が読めない雰囲気もばっちりでこれ以上ないキャスティングだと思う。

彼がどうしてあんなサイコパスになってしまったのか(しかも後天的な)、暴力も殺人も絶対許されないけど理解せざるを得ない。純粋であればあるほどに苦しみや恥辱も増幅されていく。多分故意の演出じゃないかと思うけど、森田が攻撃する男ってみんな、あのいじめっこに顔が似てた気がする。回想シーンで執拗にいじめっこの彼の顔をアップにしてたのはそこと繋げるための演出ではないかな。そういうトラウマの抱き方も純粋さと青春時代の繊細さが感じられて辛かった。
ラストは、ちょっと演出が臭すぎる?とは感じつつもボロボロの涙が…。もっと泣ける映画はあるけど、この作品は涙腺をぎゅっとさせる加速度がやばかった。さっきまで、”お〜やったね、この映画〜”とニヤニヤしてたのに。。。

そして鑑賞後一番強く感じたのは、森田みたいになるか、安藤みたいになるか…その違いってなんだろってこと。もちろん森田をあそこまで破滅させたのは激しすぎるいじめだけど、安藤もきっとスクールカーストではかなり下の方だっただろうに…。やばいやつと見せかけてめっちゃいい人だった。泣けた。あの、ムロツヨシのやばい人演技は観察力の賜物ですね。何か得意げに話すときに目を大きく見開く仕草、既視感ありすぎて笑ったわ。

とにもかくにも最高だった。マイナス点があるとしたら警察が無能すぎってか、ちょっと演出にリアルさが欠けていた点かな。。あんな怪しい家に単身で乗り込むか?ってのとラストシーン。拳銃なくなってんのにあんな少人数で駆けつけるのはなくない?笑
あともう一個。あんな危険な状況で普通に家に帰るゆかはリスク回避能力が低すぎる!!!その辺をもうちょっと詰めてもっと絶望的にしてくれたほうが恐ろしさが膨らんだとおもいます。

いや〜かなり満足
こぐまくん

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