このレビューはネタバレを含みます
原作のファンで、吉田恵輔監督ということもあり期待して劇場に足を運びました。
森田剛の熱演、想像以上の凄惨なシーンの数々、そしてうっとりするほど美しく悲しいラストシーン。
期待を裏切ることのない素晴らしい映画でした。
最初の森田と岡田の会話から、原作のキャラクターとは明らかに異なっていたので、早い段階から今回の映画化は原作をまったく同じようになぞるものではないと最初から心構えできました。
……と言いたいところですが、いかんせん個人的に原作が大好きなもので、改変のなかでもいくつか目をつぶりきれない箇所がありました。
作品全体で考えると大変楽しむことができましたが、不満に思った点はすべて原作から改変した箇所です。
私が原作にこだわりすぎているということを重々承知で、マイナスに思ってしまった箇所を上から目線で箇条書きさせていただきます…。
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【①ラストの森田と直接対決の流れ】
私が考える原作漫画のエッセンスは「日常生活(岡田と阿部のラブコメ)の薄皮一枚隔てたとこにある、危険(森田の狂気)」だと思います。
岡田と阿部の日常に歩み寄る、森田の非日常が交わりそうで最終的に交わらないところが、原作漫画のリアルであり、めっちゃ怖いポイントでした。
そこが映画では、終盤岡田と森田が対峙するという流れなっており、それはそれで吉田監督の仰る通り確実にエンターテイメントとして盛り上がりましたが、ごめんなさい私は原作のラストのような唐突で余りにあっけないラストを期待していました。
具体的にはムロツヨシ演じる安藤が森田に拳銃で撃たれたあたりから、序盤の秀逸すぎるタイトルインのシュールさが薄れたように感じ乗れなくなってしまいました。
それも、物語上自然な流れになっていれば目をつぶれたかもしれませんが、岡田と阿部に明らかに危険が近づいていながら警察の護衛がザツすぎるとおもいましたし、安藤が病室で目を覚ますくだりも必要とは思えませんでした。
【②森田が女性をレイプすること】
原作漫画で森田は殺人をすることで性的興奮を覚え、マスターベーションしていましたが、決して性浴を満たすために殺人をおこなっていた訳ではなかったと思います(間違ってたらごめんなさい…)
映画版では殺害した女性の1人をレイプしており、終盤にも阿部をレイプしようとしています。
このことで映画版の森田は性的な欲求のために殺人に手を染めているような印象を受けてしまいました。
①で原作漫画の面白さは薄皮一枚で隔てた日常と非日常と言いましたが、原作漫画のテーマのもうひとつは正常な人と異常者もまた薄皮一枚で隔たっているというテーマもあると思います。
誰でもそっち側の人間になってしまう可能性があるという恐ろしいお話です。
上手く説明できず申し訳ないのですが、性的な目的だと、殺人自体に興奮しているという森田の異常性の闇深さが少し変わってきてしまうように思いました。
この改変は小さいことのようで大きくキャラクターが変わってしまったのではと思います。
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ごちゃごちゃ書かせていただきましたが素晴らしい映画だと思いますし、最初から最後まで手に汗握りながら飽きることなく鑑賞しました。
ラストも原作から変わっていて残念でしたが、映画版のラスト、回想シーンの美しさは漫画では映画でしか表現できない、素晴らしいシーンだと思います。
「アイアムアヒーロー」、「ディストラクションベイビーズ」と続き、抜群のクオリティの邦画が続きますね。