鹿江光

サウスポーの鹿江光のレビュー・感想・評価

サウスポー(2015年製作の映画)
3.0
≪60点≫:希望が立ち上がる。
この手のプロットも一体何度観たことだろうか。世界のトップに君臨していた男が次第に栄光を失い、気付けば闇の中で悪循環の毎日。愛する人を失い、地位を失い、それでも残った者たちのために再び立ち上がり、拳を振るう。暴力のためではなく、誰かを守るために、誰かを繋ぐために拳を振るうのだ。
つまり、起承転結は9割想像がつく。だからこそ重要なのは、結果までの過程だ。何をきっかけに男は倒れ、再びリングに立ったのか。家族か友情か愛かプライドか……何が残り、何を守るのか。その過程で描かれる要素が作品の良さを決めていく。今回で言えば、父親と娘だが、彼らのやり取りもかなり心の刺さる。どうしようもなく涙が出てしまうような、そんな気持ちに襲われる。
ただ道筋が分かっていても、こういう男が全てを賭けて這い上がる姿は、観ていて胸が打たれる。タイトル戦も前のめりになって食い入るように観てしまう。それだけ迫力もあるし、一瞬一瞬にドラマがあるし、リングからは神聖なものすら感じる。観る者全ての期待と希望と祈りが、拳ひとつひとつに込められている。そして数えきれない程の勇気が、画面からこちらに伝わってくる。だからこそいつ何時でも、こういう作品は面白いし、世間からも必要とされるのだと思う。近年ではトム・ハーディとジョエル・エドガートンの『ウォーリアー』が傑作だった。(ボクシングとは違い、総合格闘技だけど)
ジェイク・ギレンホールはまたもやすごい役作りをしたようで。『ナイトクローラー』のハイエナ・ギレンホールはどこへやら……。どんな時でも魅力的でカッコいい。
鹿江光

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