Omizu

ファニー・ガールのOmizuのレビュー・感想・評価

ファニー・ガール(1968年製作の映画)
4.5
【第41回アカデミー賞 主演女優賞受賞】
ウィリアム・ワイラーが同名ミュージカルを映画化した作品。実在の喜劇女優ファニー・ブライスの半生を描く。舞台版でも主役を演じたバーブラ・ストライサンドは映画デビュー作にも関わらず、アカデミー主演女優賞に輝いた。

アカデミー賞では作品賞他全8部門でノミネートされ、『冬のライオン』キャサリン・ヘプバーンと同点になりW受賞となった。演技部門で二人が同時受賞というのは現在まで例がなく、唯一のことである。

バーブラ・ストライサンドがこの作品でスターになったことだけあり、作品の質もさることながら、バーブラのコメディエンヌとしての資質が存分に生かされた傑作になっている。

ウィリアム・ワイラーだけあり、ミュージカルをリッチでスマートな演出で上手くさばいている。美術や衣装など技術はもうトップクラス。

ジーグフェルトの女性たちの色とりどりの衣装、初めてファニーとアーンスティンが体を触れ合うレストランの強烈な赤などカラーコーディネートも見事。

スターになった女が憧れの男と結婚するが上手くいかず心が離れていってしまうというのは『スター誕生』と同じ。

しかしファニーは基本明るい。いつでもどこでも笑わせたがる生粋のコメディアン。そこまで深刻になることはなく、かと言って軽くなることもなくいい塩梅で男女のもつれを描いている。

バーブラの歌唱力は素晴らしく、こりゃスターになるわという圧巻のパフォーマンス。

それに加えて当時ショーといえば、という存在だったジーグフェルトのショー。『巨星ジーグフェルト』や『ジーグフェルト・フォリーズ』という映画もあるくらい、ジーグフェルトといえば膨大な人を使った派手なステージ。これを再現しているのもまた名シーン。

過酷な最後を迎える『スター誕生』とは少し異なり、生きたまま別れることになる。舞台人としてのファニーを肯定したラストがよかった。

相手役のオマー・シャリフ、こんな美男子だったらそりゃ惚れるよね。遊び人のアーンスティンを魅力的に演じていた。

バーブラは歌だけでなく演技も素晴らしい。コメディアンとしての明るい表情の中に少しずつ戸惑いや不安、怒りが忍び込む。手に取るように分かる表情演技が素晴らしい。

ミュージカルナンバーもバラエティに富みすごくいい。長めの上映時間ながら、リッチなミュージカルに酔いしれた。傑作。
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