囚人13号

ウイークエンドの囚人13号のレビュー・感想・評価

ウイークエンド(1967年製作の映画)
4.0
ゴダールのサタイア。 渋滞・事故・死体を並置した一本道をワンカットで捉えていくキャメラ、このカオスの劇伴は異なる音階のクラクション五重奏であり、人間の罵詈に取って代わる文明機器という点ではある意味『トラフィック』だが、世界に向けられた厳しい視点はそれと真っ向から対立する。パンを国家予算に例えてくるくだり最高すぎ。

前半に見られた暴力に潜む宗教啓蒙的な一面すら食人族に取って代わられてしまうクライマックスの狂気。自分らの思想に反した人間は家畜同然と見なす差別の究極形態をブルジョワ夫婦にぶつけることで、最終的にそれを受容する者とできないで食われてしまう者とに極端に二分化してみせる。
本作を最後に商業映画を求める者=ブルジョワジーと決別したゴダールはここでも見事に皮肉を叩きつけて去っていったことになる。

文明と権威(高級車やエルメスのバッグ)の象徴が燃やされることでブルジョワは見下してきた庶民に頼り、彼らの実情を知らされる。映画にあれこれ指図するならまずお前も現場行って撮ってみろっつーことよ!
囚人13号

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