ブルジョワの愚かさとブルジョワに対するプロレタリアの怒りをシニカルなギャグと残虐描写で描いた作品。
バタイユの『眼球譚』やブニュエルの『皆殺しの天使』など、ゴダールお得意の引用の数々。
日常のような非日常とも言うべきシーンが続く序盤から、どんどんシュールレアリズム的な地獄の田舎へと進んでいく。最初は笑いながら観ていたのに、途中から恐ろしい映画になっていく。途中で主人公たちが第四の壁をぶち破るというひっちゃかめっちゃかな映画になっていくのだ。ひっちゃかめっちゃかで恐ろしいのには意味がある。それは当時の世界、ひいては現代の世界がそうだからだ。
ゴダールがこの映画で描いた階級闘争は現代でも変わっていない。というか資本主義の拡大でさらに悪化しているといって過言ではない。欧米各国や日本でナショナルリズムやポピュリズムが勢いを増している。これは労働者層の怒りが政治や社会に表れた結果だ。労働者の怒りがエスタブリッシュメントを喰らう日が来るのだろうか。