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ラ・ラ・ランドのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.3
『夢追い人たちへ捧げられたレクイエム』


「ラ・ラ・ランド」と言えば、何と言ってもオープニングのL.Aのハイウェイ上の群舞!
映画史上に残るであろう、ワクワク感溢れる壮大かつパワフルでポジティブなイントロダクション。
ハイウェイに燦燦と降り注ぐカリフォルニアの陽光はそのままハリウッドの眩しい夢を象徴するかのようである。

でも、あのハイウェイで歌い、踊っていた俳優やミュージシャン志望の若者たちはその後どうなったのだろう?
ありったけの熱量で彼らの全身に降り注いでいたハリウッドの夢の光は一体どこに影を落とすのだろう?


その答えが、ミア(エマ・ストーン)が臨む最後のオーディションのシーンに見事に描かれている。

ミアの周りには何も無い。真っ暗な闇が彼女を包んでいる。
オープニングシーンで画面全体に降り注いでいた眩しい夢は深い陰影を産み出して、ミアの周りに漆黒の闇を落としたのである。
このコントラスト(明暗)こそが監督デイミアン・チャゼルの一貫した持ち味であり、本作「ラ・ラ・ランド」においても主題に直結する際立った特徴と言えよう。

そして、伏線となっていたミアの叔母のエピソードがこんなにも感動的な形で回収されるとは!

このオーディションのシーンにおいて我々は初めて、今はもう天国に居るのであろうミアの叔母が守護天使となり彼女をオーディションへと導いていたことを知る。
叔母の面影が象徴しているのは志半ばで倒れていった夢追い人たちであろう。

ミアは叔母の思い出を語ることで愛する叔母を弔いながら、栄光を掴むことなく散っていった冒険者たちのために万感の思いを込めてレクイエム(鎮魂歌)を歌い上げる。
オープニングシーンで歌い、踊っていた希望に溢れた俳優やダンサーやミュージシャンのために、そしてかつてその中に居て、やはり挫折の沼に囚われてしまった自分自身のために。
また、この映画を繰り返し観てしまう僕等のような名も無き夢追い人たちのために。


結局はミアも、セブ(ライアン・ゴズリング)もそれぞれに成功を掴んだ。別々の人生を選び採ることによって。

しかし、そもそも成功とは何だろうか。
幸せとは?

ここで思い出されるのは、ミアとの初めてのデートで、セブがジャズについて熱っぽく語っていたあの台詞である。
ジャズはそれぞれのミュージシャンがそれぞれの解釈でプレイすればいいのさ、と。
人生もまた、各々の個人がそれぞれの方法でプレイし生きることで自分なりの成功と幸せの解釈を発見するインプロヴィゼーションの旅なのかも知れない。

哀愁を帯びたエンドロールの「City of Stars」を聞きながら、そんな余韻をも感じられた。


↓パーティ会場のプールサイドでセブのバンドがプレイしていた曲は「Take On Me」「I ran(So Far Away)」と、この曲。カッコいいイメルダ・メイ姐さんのバージョンで☆
Tainted Love / Imelda May
https://youtu.be/BMOgSdc8OAI?si=3w1BEmzZ3X6dR2wD
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