アレックス・ギブニー監督作。
ドキュメンタリー映画。
有名カルト宗教、サイエントロジー教会がどのように信者を勧誘し、彼らの心をつかんでいるのか、脱会者はなぜ脱会したのかを暴露した映画。信者で広告塔のトム・クルーズやジョン・トラヴォルタの話も出てくる。
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サイエントロジーの教祖を元ネタにしたポール・トーマス・アンダーソン監督作『ザ・マスター』にも出てきたが、サイエントロジーには『クリア』という教義がある。端的に言えば、対話を通して過去の自分を掘り下げトラウマを解放する行為らしい。
これ自体はもっともで、結局人が前に進めない要因に過去が関係している事は多々ある。自分も思い当たるふしがあるし、殺人犯のほとんどが親から愛情を注がれていなかった過去があるという事実も存在する。
しかし恐ろしいのは過去を教会に赤裸々に話す事で自分の弱みを掴まれてしまうという側面。過去を全て差し出す事は自分の人生を差し出すに近い危険性があるのだと思った。
SF映画『エクス・マキナ』では巨大検索サイトのCEOが人間の消費行動からその人の好みの異性アンドロイドを作るストーリーが展開されていたが、サイエントロジーにも似たような発想がある。
信者であり広告塔のトム・クルーズがサイエントロジーの天敵である心理学者を父に持つニコール・キッドマンと交際している事に危惧し、二人を別れさせた後、彼の過去情報から彼好みの信者の女性とカップリングさせたという事実がまさにそうだった。
それにしても入り口に『クリア』というもっともで効果のある教義を持って行き『もっと凄い教義がある。これは序の口!』と駆り立てて『実は教義の最重要項目はSFの創作物語みたいな内容』という事には笑わされた。
ただ、インタビューばかりでなくて内部潜入もして欲しかったなぁと少し残念。無理なんだろうけど。