のちこ

LION ライオン 25年目のただいまののちこのレビュー・感想・評価

4.2
「グーグルアースで、25年前に生き別れた家族を探す話」と一言にしてしまえばそうなのだけど、現代のテクノロジーを活用してこんなことができちゃいました!というようなキャッチーなストーリーではなかった

実話をもとにしていることもあるだろうが、かなり丁寧に心情描写がされており、1人の男のアイデンティティを探す旅を共に苦しみながら歩んだ感覚になった
本当に意外だった

また義理の母役であるニコール・キッドマンが非常にいい
初めてサルーに会った時の表情、柔らかい声音、不安で仕方ないサルーと同化してしまい安心感で胸がいっぱいになった

私は別に迷子になって家族と離れ離れになったわけでも、辛い施設生活を送ったわけでも、義理の両親に育てられたわけでもない

だけどなぜだろう、サルーが故郷に帰れた時には泣けて泣けて仕方なかった
私も何かを見つけた気がしたのだ

決して同じ境遇ではなくとも、人は生きていく中でずっと大なり小なり自分のアイデンティティとはなにかを探し続けているものだと思う

「あなたが生きているだけで幸せ」
そう思ってくれる人がいる人生は、どれほど尊いことか
「あなたが生きているだけで幸せ」
そう思える人生が、どれほど豊かなことか

大切なことを思い出させてくれたこの映画を、そしてサルーの勇気を心から讃えたい
のちこ

のちこ