こーた

LION ライオン 25年目のただいまのこーたのレビュー・感想・評価

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獅子(ライオン)は我が子を千尋の谷に突き落とす、というが、戻ってくるまでに25年とは、その谷底、深すぎるぜ。
タイトルの真の意味が明かされるエンディングが圧巻だ。実話らしく実際の映像と相まって(ニコマン、似すぎ笑)、実母カムラのいう「雷に打たれたよう」な、あるいは養母スーのいう「全身に電流が流れたよう」な感覚に、うちのめされる。

揚げ菓子の伏線が効果的だ。油に浮かべた揚げ菓子を、くるっとひっくり返すように、サルーの世界は180度転換する。子供のころの思い出が、青年となったサルーを運命へと導く。

物語はやや冗長で(実話の弊害か)、断片的だ。シーンの断片、思い出の断片。のちの物語に必要なものもあれば、繋がりのうすい、不必要と思えるシーンも、淡々と綴られていく。
だがそれは、インターネットで検索するときの感覚とも重なる。無味乾燥な画面をスクロールして、情報の断片がただただ流れていくときの、あの感覚。
グーグルアースで地球を回転させ、サルーがついに故郷をみつけたとき、思い出の断片はいっきに集約される。そして実際に現地を訪れたとき、記憶がいまと重なって、像を結ぶ。断片的な冗長さが、ついに実を結ぶ。


補遺。
美男美女のサルー(デヴ・パテル)&ルーシー(ルーニー・マーラ)にベストカップル賞を。
同じ方向の帰り道、道の両側で見つめ合って、ステップを踏んで、恋に落ちる。ドキドキした!