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LION ライオン 25年目のただいまのtsuraのレビュー・感想・評価

4.3
人の愛の深さをまざまざと感じた。

子を愛する親心というのは距離でも引き離せないものなのだと。
サルーが乗ってしまった回送電車は25年もの月日まで遠くに幼子を運んでしまった。

だけど彼は色んな人の愛に助けられた。

彼が封印していた秘めた想いはある日彼を迷わせ、爆発させながらもグーグルアースで繋がった点と点はまるでSFの様な時空を超えた壮大なストーリーへと昇華していく。

地球は小さい様で途轍もなく広いんだ。

知らない世界が実はそこら中にあって、自分達が住んでる町にも未だ見ぬ景色はあったりするのだからこの出来事が如何に奇跡である事なのか、
それを感じ得ただけでも本作を観た甲斐があったというものだ。

役者の演技もすごく良かった。

時折、見張る様に見ていたりするのだが本作はそれをせずともそういった惹きつける魔力を持っていた。
ニコールキッドマンの演技には久々感動した。
特に彼女の幼少期をサルーに語るシーンは切なくて堪らなかった。
そして、サルー演じたデヴ・パテルも美しい演技だった。
殆どの人では到底共感し得ない苦悩を非常に繊細に表現していたと思う。

本当に母を探す事が最適解なのか、見つけれるのか、今の自分を育ててくれたママやパパ、マントッシュにはどう顔を合わせればいいのか、大好きな彼女には?
考えれば考えるほど答えの見つからない禅問答、
あの日の帰路を彷徨う姿を見ていた時は感情移入に苦しんだが、あれはそうではなくどちらかと言えば彼を助ける側の気持ちに私は耳を傾ければ自ずとこの映画の深さを感じれた。

彼の苦しみを映像では表現しているが、実際には無いわけで。
だからこそこの2人の演技は非常に尊い物の様に感じれた。

是非見て欲しい作品の一つなのでレビューを読んで頂けたならこれ以上のストーリーに対して言及しないけど、彼の幼少期インドでの出来事を描いた前半は胸が張り裂けそうになるくらい秀逸だった。

兄とのかけがえのないあの瞬間は見ている人達にもある筈の"心の情景"だ。

母の温もりを思いださせてくれるし、何より劇中のインドの風景はひとりひとりの郷土への想いすら想起させる数少ない作品だと思う。

纏まりはしない文章だけど、この作品はぜひ一度見て欲しいオススメの作品であった。
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