トメさん

LION ライオン 25年目のただいまのトメさんのレビュー・感想・評価

3.6
故郷に帰ってからどうなるかみたいな物語かと思ったけど、少し異なった。それまでの苦悩とか、故郷を捨てた苦悩とか、故郷を探す苦悩とか。幸せがあるから、幸せを知っているから苦悩があるのだなとも思えた。

ふとした時に、出会った故郷の品を手に取り、故郷に帰らなきゃとなった時は、こちらも「あぁ・・・帰らなきゃダメだ」とゾワっとなった。素晴らしいシーンだった。

そこから、故郷への熱量、そして人間に備わっている脅迫的な観念が彼を幸せとのジレンマとの間を突き進ませる。これがグーグルアースなんかよりはるかに強いパワーでありツールだった。


インドという国を例に、世界中の色んな国、地域で貧困がある事実を、強要するわけでなく、叙述的に示してくれる。主人公は自分が引き取られていなかったら、こんな裕福な生活を送れていなかったという後ろめたさを感じ、それだけでなく、それの考えは自分だけでなく周りの人々までに向いてしまうのは当然に思えた。吐き気がするとまで言っていたところが印象的だった。


少しだったが、引き取ってくれた両親、特に母親の考えも描かれていたのは、良かったし、母親の話だけでも一本ドキュメンタリーになりそう。
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