ー何も解決しない それでも時は流れていくー
中国の映画監督ジャ・ジャンクーは、やはり流石である。本作”山河ノスタルジア:山河故人”は、評価が高かったので、とても興味があった作品。鑑賞後、『あー、なるほどね。』と納得。
『オフィス北野』が配給元のようだが、どこか北野映画の香りも。音楽の使い方などがちょっと似ていて、久石譲さんの楽曲のようなテイストを感じさせる。
物語は、1999年から2025年までの25年間を3つに分け、一つの物語を3分割し、オムニバスではないのにオムニバスのように、それぞれ主役が入れ替わる構成。
その時代時代で撮り方も演出も変え、そのメリハリある観せ方がとても好きだった。
冒頭、ほぼ正方形に切り取られた画角の中では、90年代を演出させるためか、わざと古く雑なタッチで場面を映し出す。最初、『あれ?ジャ・ジャンクーって、こんな(安っぽい)タッチだっけ?』と不思議に思ってしまったが、2000年代になると、急にフランス映画っぽくなる感じがドラマチックだった。
そして、変わらず、チャオ・タオの雰囲気も良い。この監督の作品では、相性がとても良いのだと思う。
特に、テーマはざらついているのに、映画全体の景色の透明感がすばらしい。ラストにかけて、じんわりしてくる感じは、まさに『山河ノスタルジア』である。(この邦題は、なかなかマッチしているな。)
オムニバス風に話が展開していくが、どの物語も明確に解決しない(させない)所も、なかなか渋い。
解決しない憂鬱を抱えながら、それでも人は時を生きていく。