ほぼ全編が主観視点のホラー映画。
監督・脚本:ジェフ・チャン。
母親の命と引き換えに生を受けたグレースは、祖母のもとで厳格に躾けられて育つ。
大学生になったグレースは新入生パーティを楽しむが、そこで恐ろしい幻覚に苛まれる。
その幻覚は日に日に激しさを増しグレースを苦しめるのだった。
女子大生体験型ホラー。
主人公グレースの視点で展開される本作。
主観視点の映画としては「ハードコア」というアクション映画が有名だが、ホラーとも相性のいい手法と思う。
まぁ、最初にやったもん勝ちな題材とも思うが。
こうした主人公視点ホラーでおもしろいと思うのは、次第に現実と幻覚とが曖昧になっていくことの恐怖がダイレクトに表現できること。
本作でも、厳格な祖母の暴言やルームメイトとの確執、グレースを誘惑してくるイケメンなどが登場するが、主人公の目をとおして描かれる彼らの姿がどこまで真実を映し出しているのかわからない不安。
登場人物たちへの不信感がグレースを追いつめ、孤立化させていく過程が非常にわかりやすく表現できていると思う。
惜しむらくは、物語のプロットが、そうした表現手法におけるメリットを享受できるようつくられていないこと。
本作のテーマは明瞭でわかりやすく、「人類の原罪」、「悪魔の誘惑」といったキリスト教徒には馴染み深いもの。
主演の女優さんがめちゃくちゃ綺麗な人で、彼女が悪魔に誘惑されて自慰行為におよぶ一連のシーンは、ただただ「ありがとうございます」という感じ。
グレースが誕生した背景も、いわゆる「無原罪の御宿り」的なことかなーと思ってたら、ラストでちゃんと種明かしがあってよき。
とはいえ、映画全体としては、決してつまらないわけではないがパンチもなく、悪い言いかたをすれば、「珍しい撮影技術をつかった実験映画」の域は越えられなかったかなという印象。
上述したようなメリットを最大限に活かせば、P.O.Vホラーとはまたちがった魅力が引き出せそうなポテンシャルは感じさせる。
…が、ほんとうにそうなら、もうブラムハウスあたりがやってそうではあるけどね。
なお、本作をNETFLIXで視聴される際は、日本語ではなく原題の「GRACE」で検索しないと引っかからないので注意。
ちなみに、同じく主観視点のアクション映画「ハードコア」はくっそおもしろいから、こっちもオススメだよ。
イケイケの女子大生になって神父さまを誘惑しよう!
2022ー旧32