映像の色合いと、登場人物たちの絶妙な
表情や視線の動きの描き方がとても
緻密で、リアルで、よかった。
中盤までのだらりとした音のない時間の
流れから、急に物語が加速して音も増えて
いく、という構成に、かなり引き込まれた。
恋人がいるのに気になる人ができて
しまったり、それを相手に伝えられたことが
きっかけで別の人が気になり出したり、
好きな人に同じように好きな人がいることを
知って、想うことしかできなくなったり。
そんなどこにでもある、誰もが経験した
ことのある感情の些細な動きが丁寧に、
的確に描かれているのが、今泉監督の
作品だなあ…と思った。
シーンとして好きだったのは、レオンが
お会計の時に、702円ぴったり出して
お釣りがなかった場面。もどかしくなった。
映像として心を強く掴まれたのは、
レオンがおむすびを作っている手元。
今まで見たどんな塩おむすびよりも
おいしそうに見えた。。
ジウと寄りを戻した直後にレオンに再会した
ソナの表情、職場の人たちにアイスを買った
上に「恋をしました」と言って笑うレオンの
表情が、特に、心に焼きついている。
なんだか心にかすかに春風が吹いたような
気がして、駆け出したくなるようなラストが、
この作品の中で一番好きでした。