ブラックユーモアホフマン

ピートと秘密の友達のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ピートと秘密の友達(2016年製作の映画)
4.9
物語についての物語。もはや俺の映画。こういうのには弱いよ。最高すぎる。

公開当時、劇場で観なかった自分を恨む。
これでデヴィッド・ロウリーの長編で今のところ観られるものはすべて観られたが、2005年の『Deadroom』というのと2009年の『St. Nick』というのがあるとな。こちらもいずれ観る機会が欲しい。
『The Green Knight』もとても楽しみだが、俄然『Peter Pan & Wendy』が楽しみだ。
楽しみだが、劇場公開しないらしい。Disney+スルーだってさ。ディズニー!!おい!!ふざけるな!!

本作は『E.T.』は明らかに意識してる。ドラゴンの名前が”エリオット”なのは元からそうだけど、少年が森で不思議な生き物と出会って友達になる話なのも同じだし、”空を飛ぶ”描写にカタルシスを持ってきているのも同じ。なんで空を飛ぶだけでこんなに泣けるんだろうか。そして成長と共に別れざるを得なくなるのも同じ。でも親友がどこかで元気にやっているってことが彼の今後の人生において支えになる。

絶対、ピーター・パンもそういう話だもんな。心の純粋な子供の頃にしか会えない友達で、またしかも空を飛ぶでしょ。絶対いいじゃん。なんで劇場公開しないんだよ!!なんでだよ!!

スピルバーグ的だと思うのは『E.T.』だけじゃなく『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』的でもあり、ちょうどあのティラノサウルスくらいの大きさなのよね。それが街にいるスケール感とか見上げる人々の顔の角度とか。(ブライス・ダラス・ハワードなので『ジュラシック・ワールド』も想起するが。)

また当然『となりのトトロ』であり(『平成狸合戦ぽんぽこ』でもあり)、『トイ・ストーリー』シリーズにおけるアンディとウッディの関係や、『くまのプーさん』における100エーカーの森のクリストファー・ロビンとプーの関係にも似ている。
いわゆる”移行対象”というやつで、子が親離れする過程で必要とする親代わりの存在。
そして親の子離れも描かれたりするともう、泣けて泣けて仕方ない。

物語についての物語だというのは、現実にはドラゴンはいない(とされている)。物語の中にだけ生きている存在だということにも象徴される通り、物語そのものもまた子供の成長を助ける、ある意味では”移行対象”となり得るのではないかということで。それはピートが両親からもらった絵本を大事にしていてそこから彼をエリオットと名づけたという描写からもよく分かる。

しかしそこで大事なのは、トトロだろうがウッディだろうがプーだろうが、エリオットだろうがただのイマジナリー・フレンドとは違うということで、彼らは確かに存在するのだ。
そのことを本作は街中の人たちがエリオットを”目撃”することで表している。

ドラゴンの存在を純粋に信じられるのは基本的に子供たちなのだけど、大人たちの中で唯一信じているロバート・レッドフォードおじいちゃんが最高で、彼が文字通り語り手=ストーリーテラーになっていることも必然的。

子供の頃に親に読み聞かせてもらったりした物語が、大人になってもきっと人生を下支えしてくれているんだ、と、信じてる人が作った映画だ。僕もそうだから、泣いちゃうよ。そして更に拡大解釈すれば、つまり映画は人の生活に必要不可欠なものだ、と言う映画でもあると思うわけで。

挿入歌の”The Dragon Song”って歌ってるWill Oldhamって、『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の中盤で大演説するおっさんで、しかもケリー・ライカートの『オールド・ジョイ』のカートだ!!『ウェンディ&ルーシー』にも出てるんだ。出てたっけ?
しかもデヴィッド・ロウリーの『Pioneer』って短編にも出てて『さらば愛しきアウトロー』の挿入歌も歌ってるんだ。色々繋がったわ!!超重要人物じゃん。Bonnie “Prince” Billyって名義でも活動してる、と。要チェック。

【一番好きなシーン】
ロバート・レッドフォードが娘の肩を抱いて「言っただろ?魔法だ」