Uえい

悪意の眼のUえいのレビュー・感想・評価

悪意の眼(1962年製作の映画)
3.5
久しぶりにシャブロル監督作品を見た。この前に撮った作品が興行的に上手くいかなかったため、ジャンル映画の要素を増やすように制作したらしい。だからか、見やすくて純粋に楽しめた。

あるブルジョワの夫婦の生活に、青年が入り込んでいくというストーリーで「テオレマ」や、近年だと「パラサイト」の様な乱入者モノを想起する。

フランス人の青年アルバンは新聞記者としてドイツに駐在していた。物書きの仕事が上手くいかず、ドイツ語が喋れると嘘をついて赴任したのだ、だからか惨めさや、近所からの疎外感を感じている。

近所には有名な小説家アンドレアスが住んでいた。妻のエレーヌがフランス人ということもあり、アルバンと仲良くなっていく。ある日、夫婦と湖で遊んでいたところ、アルバンは溺れてしまう。これを辱めを受けたと感じてしまい、アンドレアスへの尊敬や親しみの念が憎悪に変わっていく。そこからアルバンは夫婦につけ入る隙を探し始め、とうとうエレーヌが浮気をしていることを突き止めるのだった。

エレーヌを尾行するシーンがサスペンス映画的で、ヒッチコックの「めまい」を連想する。特に、サーカスなどお祭り会場の人混みの中を追跡するシーンがスリリングで良かった。主人公アルバンの意地悪な視線が、観客と合わさっていくようで、同時に嫌な感覚にも陥った。

最後に、浮気現場の写真をアンドレアスに見せるが、写真自体めくるごとにアップになっていき、それを見るアンドレアスの表情にカメラがアップで迫る演出が印象に残った。アントニオーニの「欲望」を思い出す。
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