寝て起き太郎

二重生活の寝て起き太郎のネタバレレビュー・内容・結末

二重生活(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ネタバレという程ではないかもしれないけど、重要な部分には触れてしまう感想になると思うから一応配慮しておきます。


なんでこんなにこの物語に引き込まれているのか終始不思議だった。ドラマチックではあるけどごくごくありふれた物語を生きる尾行の対象者、その物語を食い入るように見つめる尾行者。ただそれだけ。対象者の主観で物語が進めばつまらないけど、それを尾行者の視点から見るから面白いのかなと思っていた。しかしラストで気付かされる。映画を見ている自分もまた、無作為に選んだ尾行の対象者を尾行する人を無意識の内に尾行していたことに。だからこんなにドキドキしていたのだ。
スクランブル交差点で尾行者に振り向かれた時は「気付いてるよ」と言われたようで、心臓の鼓動が早くなった。

交わることのない、いや、交わってはいけない二人が互いを認知する時の緊張感はある種のホラー。
『何者』を初めて読んだ時の心臓を鷲掴みにされる感覚に似ていた。久々に気付きを与えてくれる映画に出会えたように思う。
「あなたもきっと誰かを尾行したくなる」なんて煽り文句は公式ではそりゃ付けられないだろうけど、そう言いたくなるような映画だった。