無自覚が如何に残酷なものであるか。
そこに絶望し諦めになると、主人公のように心を閉ざすことしか出来なくなるのではないだろうか。
愛は絶対に存在しているが、愛だけの理由を乱暴に振りかざすことは人を追い詰める。
悪気のない母親、やり場の行き詰まった兄、自暴自棄でもがく妹、それらをシャットアウトすることにより自衛する主人公。
家族のぶつかりよう、感情の高まりよう、主人公が人の言葉をシャットアウトしていく描写もリアル過ぎて息苦しい。
主人公の選択は後に家族を傷つけるものになるだろうが、そうさせたのは無自覚な家族のせいでもあるということをその後家族が気付くことを願いたい。
語られてはいないが、もっと複雑であろう事情が散りばめられているのでそこの説明はもう少し欲しかったかな。
一番可哀想なのは妹だと思う…
会話劇を楽しめない人にはつまらないかもしれないが、ぐさぐさ刺さるセリフが山ほどある。人は誰しもが各々持っているであろう恐れもヒシヒシ描かれている。それらを助長させる演出、音楽も良い。
ドランはきっと自らの家族を責めているのだろうが、その精神を映画という場で表現するのは良いと思う。それこそが表現かと。賛否両論あろうがドランが魅力的なのは事実。
居心地がいい実家などこの世に存在するのだろうか
閉塞的な環境であるが故の衝突は誰しもが避けられないだろう
血ほど乱暴であり強力な呪縛はない