おさら

たかが世界の終わりのおさらのネタバレレビュー・内容・結末

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

ドラン監督の最新作「たかが世界の終わり」観てきました。相変わらずどこの描写切り取っても美しくて、写真集欲しいくらいでした。ドラン監督の作品は、「マイ・マザー」しか観てませんが、今回の作品もドラン監督の個性が出てるなあと思いました。人物とか、至近距離の撮り方とか、光の入れ方とか、詩の織り込ませ方とか、家族愛をテーマにしているところとか。ドラン監督の作品は母親がいつもいいアクセント、というか..今回も役者がすごい上手いな、って思いました。ただ「マイ・マザー」のような苛烈で印象的な比喩方法は今回はないように思えました。あれは19歳のドラン監督だからこそ生んだものなのかもしれません。あの荒削り感が私は好きでしたが。「マイ・マザー」では、人物と静物でリズムをつけていましたが、今回は沈黙と喧騒でリズムをつけているように思いました。主人公が寡黙っていうのは珍しいですよね。これを映画で、しかもドラン監督で観れる喜び..ドラン監督は至近距離を映すことが多いので、人物の視線や瞬きがすごい感情を揺さぶられます。映画は大げさに言えば、基本始終言い争っている感じなんですが、ギャスパー・ウリエルはこれについて「しゃべり続けているのは、ルイの告白を聞くのを恐れているからかもしれない」と言っています。私もそう思います。この喧騒から突如の沈黙はゾッとするほど美しいです。もちろん、ずぶずぶと沈むような沈黙も綺麗なんです。作中で人物が「ルイは話さない。誰も理解できない。だから美しく見える。」みたいなことを言ってるシーンがあるんですが、本当にその通りだと思います。これはドラン監督の作品にも言えて、ドラン監督の作品ははっきりした答えを出しません。 これは、ドラン監督が不完全さを好む人だからという理由をもあるでしょう。多くを語らず、言葉の片鱗で汲み取らせる、って感じがあります。だから心に残って、なんども見返したくなるんだと思います。今回の作品も曖昧なことばかりですが、個人的にはキャッチコピーの「これが最後だなんて、僕らは哀しいくらい不器用だった。」っていうあの文が全てだと思っています。あとは人物のセリフで読み取るって感じでしょうか。アントワーヌが1番そういうことを言ってる気がします。時間があれば、もう一回観たいです。
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