JIZE

フィフティ・シェイズ・ダーカーのJIZEのレビュー・感想・評価

3.4
サディストの性癖を持つ歪んだ愛情を受け入れられずグレイの元を去り出版社に就職したアナにグレイが再び新たな契約を結ばせた事で2人の刺激的な生活の再開を描いた官能SM映画の続編第2弾‼前作の『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(2015年)』から2年振りの新作,三部作完結の二作目となる。中盤で訪れる仮面舞踏会の場面が絵的に妖艶で作品の最深部を象徴してるようだった。今回もメインの支柱を為す"倒錯した嗜好に溺れていく様"が前作同様に身近な登場人物(新キャラ)を巻き込み過激に綴られている。また主に"Domination&Submission(支配と従属)"の関係性が平行線を保つ状態で感情を高ぶらす美エモーショナルな映像を織り込み展開される。まず結論から言いましょう。ストーリーテリングが希薄なのは前回同様,肝の性描写じたいもかなりフツーな状態(あるいは反復)で終始してしまっていた。所謂アナとグレイの"亀裂(不仲)から修復(プロポーズ)"に至る描き込みが安易で単調。序盤で離れた仲(愛)が縮まるプロセスも前作の最後を帳消しにするような短絡的でありながらグレイ自身のゆがんだ性質を受け入れるアナの単純さには映画の論法が無視されてしまい大変思考を欠いたものになっていた。人間ドラマを盛り込むには二人の行方を遮断させる"障害"が無さすぎた(あるいはあっても脆弱)な印象であった。またSMの嗜好で刺激を増幅させる要素でも微妙にシチュエーションをズラしたりで前作を踏襲させた程度に正直過ぎない。逆さをてらうような展開は一切訪れず海ドラのようなテリングが全編拭えなかった。要は全編アブノーマルな内容ではなく単調な"バニラプレイ(ノーマル)"となっている。

→総評(白塗りの世界で最愛の従属者を求め……)。
主演ダコタ・ジョンソンとジェイミー・ドーナンの肉体美を堪能する映画なのだからカラダを維持し続ける両者のストイックさにはやはり感心せざる得ない。言ってしまえば内容以前にここが一番の見所だろう。また開幕,グレイがベッドで悪夢に魘される様をグレイが両親から虐待を受けた子供時代と回想で結び付け同時に本作のテーマが彼の"心の闇(原題"Darker")を映し出すのだと知る。サディストの葛藤を作品の頭で描いた事で一辺倒に彼の思想を揶揄出来ないエクスキューズの継ぎ足しは良かった。そして場面場面ではコメディ要素もまぶされてる。例えば終盤,ある女性にアナが激昂を示し水を顔面へぶっかける場面やグレイが会社をクビにさせる程の権威を保持してる即物的な場面など。中盤でヘリが墜落する場面も原因が丸ごと割愛され失笑が込み上げる。来年の完結編『フィフティ・シェイズ・オブ・フリード(2018年)』では複雑な思惑が絡み合うサスペンス路線へ官能から脱却し展開される事に期待したい。なので今回であまり路線転換が為されなかった事は作品の落ち度に思う。前回迄のあらすじが映画の冒頭で示されないので前作の鑑賞はアナとグレイの距離感を埋め合わせるうえでマストでしょう。そっち方向の嗜好があるわけではないがクラシカルな音楽と美の映像で魅せるR指定のセッションには熱を帯び目が釘付けとなった。ダコタ・ジョンソンが非常に美人仕様で撮られている点や主演二人を取り巻く複雑な人間模様の伏線など官能以外にも美点が豊富で見込める続編だった!是非お勧めします‼!
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