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ハーモニーのgnspのレビュー・感想・評価

ハーモニー(2015年製作の映画)
4.0
公開当時劇場で観ましたが改めて見返す。

うーむ、正しく「小説」の映像化。「見る小説」だなあと。
セリフは大量のモノローグと会話シーン、情景は映像とモノローグに。

なんというか、ここではしっかり「映画」の感想を書きたいと思う。
でもなかなか「内容」以外のことが思い浮かばず。
そう思うということは、この作品はしっかりと「映像化」が出来ていた。ということになるのかな。


難解な内容を映像を加えてなんとか分かりやすくなるようにする工夫は為されていたように思う。
表面上の「わかりやすさ」があっても深くは理解できないんじゃないか?とは思いつつも。

そして忘れがたき上田麗奈さんの怪演。
「同じ場所にいるのに同じものは見ていない」
「呑み込まれそうだけど、触れたら壊れてしまいそうな繊細さ」
を見事に表現してみせた。
僕はこの作品で彼女の名を覚えました。


一応今だからこそ思える作品の内容の考察をするとすれば、
トァンとミァハ以外の登場人物の殆ど(代表としてキアン)が尽く記号的な動きしかしないのは、普通の作品だと大きなマイナスポイントになる。
だがこの作品では、それがかえってこの「世界」に巣食う「普通」とその空虚さを示すことに寄与していて、そして正しくこの物語が「普通」でない生きかたを求めた2人の「セカイ」に収束していく理由にもなる。
というのが改めて見て思ったこと。

信用スコアやヘルスケアなどの管理方面は、間違いなく公開当時と比べてこのリアルは近づいていて、それを10年前に書いた伊藤計劃氏ってなんという…となる。


いい映画ではある。けどそう言うよりかは、いい小説の映像化。
だからやっぱり小説読んでほしいよ。
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