ぽー

ディーパンの闘いのぽーのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
4.8
主人公の絶望、葛藤、苦悩が手にとるようにわかる、主人公たちの息づかいを感じる作品。
だからこそ、派手な演出はなくても、ささやかな幸せに満ちたシーンでは同時にはにかんじゃうし、恐怖や不安も一緒に感じて全身に力入るしで、人の生き様をずーっと真横で見て鑑了後はぐったり&白昼夢のようなラストの急展開にボー然、て感じ。

それにしても、主人公のディーパンと妻ヤリニ、娘イラヤルの距離感が縮まっていく様。たまらん。刺さった。
内戦で亡くした本当の妻と娘との思い出を弔って新しい家族を大切にしたいと、三人のなかで一番はじめに舵をとったディーパンと、
偽の娘と旦那への疎ましさを取り払っても尚、苦境を同一体験した同士としか思えず新しい人生を歩むことを受け入れられずにいるヤリニ、
移民としての生きづらさに子どもながらにぶち当たって傷つきながらも確実に強さを手に入れていくイラヤル。
そんな三人が、ぶつかりながらも互いを思いやりあい、歩み寄って、家族になっていく。全部抱えたうえで、家族をやって、生きていく。その一つひとつのシーンが丁寧に描かれているもんで。たまらん。

それともう一つたまらんかったのが、薬の密売人薬のイケメンお兄ちゃんの色っぽい憂い…(´-`)団地のチンピラ達の抗争は正直語られきっていないので背景とかよく分からないことが多かったけど、あのお兄ちゃんにもヤリニとのやりとりを通じて結構感情移入してたから、最後はオイオイオイオイ!!!て心拍数アップしちゃうし、そんなことがあった上でのディーパンが夢見た妄想なんじゃなかろうかと思えるようなラストについていけず、なんとも複雑な思いに駆られた。
そういうくすぶる気持ちになるのは、きっとこの作品が見せたかったのは、シャンゼリゼだのエッフェル塔だのルーブルだのイメージとしてのキラキラしたフランスではなく、移民が混在してあらゆる文化がごちゃ混ぜになって居場所を求めて人々がもがいているフランスのリアルだったからだろうし、そういう意味で地に足ついた作品、と感じた。

メディアの前評判も高くアカデミー賞受賞した「キャロル」を抑えてパルムドール受賞した本作に、マスコミとかは異を唱えたらしいが、観た後も心に残るのは、人間の機微を鋭くえぐり描き出した本作だと感じた。もちろん、「キャロル」もものすごくよかったというのは言うまでもないんだけど、主人公の人生を追体験できる贅沢な鑑賞としてはこっちの方が上かな〜。
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