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ディーパンの闘いのとぽとぽのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
4.0
即席偽装家族の大黒柱、頑張れディーパン!三者三様の立場や問題に真摯に目を向けつつ。流石は現代きっての仏が誇る才能で新作が待たれるジャック・オーディアールといった骨太作品に面白いかとか好き嫌いの次元を越えてガツンと来た。そして彼の作品はいつも重厚なドラマだけでなく、そこに"暴力"が重要なキーとして関わってくる印象。切っても切れない無理解と憎しみの連鎖。それは何よりも人類の世界を、現代社会を形作る性。些細なことで綻ぶ日常、そしてすべてをぶち壊すように爆発する引き金。消えない過去、消せない記憶、甦る悪夢や過ち。タイトルの出方が秀逸かつ衝撃、ある意味記憶に焼き付くレベルで。自分の国の戦火を逃れても日常がこんなに大変だなんて、張り詰めるような緊張とぎこちなさに感情を揺さぶられる(音楽も不穏)。ここで普通なら色んな問題を乗り越えて本物の家族になっていくのだろう、けど何かを便りにしないと生きていけない気持ちが必ずしも報われるとは限らない。言語の壁もそうだし主人公たちが見て聞いて感じる世界を巧みに映像化している、捉えている。喉に何か詰まった感じが抜けないし気分が沈むかも、でもその価値がある。日常の中の非日常に不和が広がり、分かり合えず理不尽な世の中だ。何かとグローバル化と言われて技術の進歩も合わさって国境が希薄になるような方向へと向かっていると思われた今世紀であるけど、結局のところ内線、国際紛争における難民・移民問題等で明るみになったのはヨーロッパを中心に皆の不寛容(日本人も他人事じゃない)。あっちの若者ってフーリガンとかある位だし、ジャージみたいな服着てドラッグきめて集合住宅に溜まっているイメージ。よそ者にはよそ者の仕事ってのが別にあるのか?ツラく当たって争いが表面化して激化していくように終盤の目を背けられない緊張感がエグい、ただただ画面に食い入るような釘付けになるしかない。他に何もできない。新しくできた大切なものを守るためか、自身の溜まっていたものを吐き出すためか、実戦叩き上げの野生の血がたぎる様が圧巻。一度暴れだしたら止まらない、そんな普通が普通じゃなくなるという点では『ブレイキング・バッド』のような衝撃で強烈に顔面を殴打される。そしてこの瞬間、コーエン兄弟が審査員長を務める時のカンヌでパルムドール受賞も分かった気がした。邦題だけど確かに戦っていた、そして最後のタイトルの出方も大いに反則。
多分公開当時はその真っ只中で今見るよりもっとタイムリーだったろう。それを映画という表現でものの見事に伝えてみせる可能性と責任者、心揺さぶられる警鐘。作り手が手先の器用さだけじゃこうはならない、きっと。セリフに過多に頼らないのがいい、オーディアール監督印の如何にもなスローモーションとかが鼻につく人もいるかもしれないけど否応なしに力強く響く。完全にディーパンの立場でありながら時に俯瞰的にも物事を見ているような一種覚めた熱量みたいなものをひしひしと感じるし、意識的・意図的に神経を逆撫でされる。ハッピーエンドではあるものもなかなか二度目を見る気にはならないかもしれない、けどパワフル。けど結局のところ所詮は他人事なのかな、とも感じる悲しさ。人が人を傷付ける、人生ってそこまでして生きる価値のあるものなのかな?この世界ってそこまですがり付いてまで生きる価値のある場所なのかな?

「お宅の子?」「今からお前たちは家族だ」
「俺たちには秘密がある」「俺一人じゃ全部は無理だ、子供が二人いるみたいだ、お前も働け。(→家事も仕事よ→)ふくれっ面ばかりするな」
「事務所みたい」「ユスフがここでは普通だと」
「友達なしで生きていけるのか、、詩よ、テーマは友情」
「言葉は全部分かるがちっとも笑えない」「言葉の問題じゃない、ユーモアのセンスよ。国は関係ない」
「面白いわね、映画みたい」
「二本で5ユーロ」→これ好き!
「すべて終わった、ナンディカダルは壊滅しました」「私の中では終わっています」
「♪我々の傷が癒えることはない、決して夢を諦めない」
「私たちの国では転んだり痛いときでも微笑むの」スリランカ
「昼間から発砲事件があるなんて、何も思い出さないの」「俺はここにいる、どこへも行かない」
「発砲禁止区域だ、通行禁止だぞ」「夫を傷つけないで、夫は戦争で頭が変になったの」
TOMATOMETER87% AUDIENCE82
Dheepan offers a timely, powerful look at the modern immigrant experience in Europe.
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