うふん

サウルの息子のうふんのネタバレレビュー・内容・結末

サウルの息子(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ずっしりと重い内容だった。
主人公であるサウルをまるでずっと間近で見つめていて、彼の見聞きするもの以外は聞き取れなかったり、ぼんやりしている。そのせいで自分がサウルになっているような、サウルを至近距離で観察しているような、妙な臨場感があって、目が離せなかった。
いつものようにガス室の清掃をしていると、ガス室で一人だけまだ息のある少年がいた。彼は間もなく息を引き取ってしまうが、サウルは彼を自分の息子だと言い、正式に埋葬しようとラビを探す…
色々な取引や機転を利かせながらラビを探すが、やっと見つけたラビが殺されてしまったり、生きようとして自分はラビだと嘘をつくもの、ラビだが、息子を埋葬する前に生きるためにと逃げ出してしまったり…極限の状況下での人間を描いている。サウルと仲の良いアブラハムにレジスタンスたちの仲間になりながら奔走するが、レジスタンスの闘おうと血気盛んな様子を少し離れて見ているような、サウルと鑑賞者である自分。きっとサウルには息子を埋葬しようとする意思しかないのだと思った。
そもそも、その少年がサウルの息子だったかどうかもあやしい。アブラハムはサウルに「お前に息子はいない」と言ったし、それに対するサウルの「妻との子じゃない、もっと前にできた子だ」という答えもなんだか怪しかった。サウルにとってその少年を埋葬するということは希望のない世界で生きるための唯一の希望だったのではないか。
最後は、川を泳いで逃げる際に少年の遺体はサウルから離れてどこかへ流れていってしまう。それを必死で追いかけようとするサウルを、レジスタンスの一人が川岸へと連れて行く。川から森へと逃げる間、サウルはまるで心ここにあらずといった感じである。5分だけ休憩しようと立ち寄った小屋でサウルはドイツ人?の少年を見た。少年も彼を見ていた。そこで今まで顔に感情がなかったサウルは初めて笑うのだ。彼がサウルにとって何かしらの希望になったのだろうか。少年は驚いて走って逃げるが、そこへドイツ兵がやってきて、少年が声を出さないように口を塞ぐ。しばらくして銃声が聞こえる。少年は離されて走って行き、森の中へ姿を消す。という最後だった。
誰の心の声も聞こえず、bgmも鳴らず、ただあったことだけを延々と見せられていく。見ている間、まるでサウルように感情がないみたいにこちらも感動もなく淡々と見てしまい、終わったあとで、心が重くなっていることに気がついた。そして見たあとで色々と考えてしまった。
うふん

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