MikiMickle

ロブスターのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
3.7
「独身者」が悪とされるある世界。もしくは近未来。今現在と全くみためも同じだけれど。

妻に離婚され、あるホテルにつれていかれるデイヴィッド。(コリン・ファレル)

そこでのルールは
①45日以内に配偶者をみつける事。
②独身は悪。
③パートナーがみつけられなかった場合、動物にさせられます。

デイヴィッドが連れている犬も、以前ここにいた“兄”だ。

ホテルにはたくさんの男女。同じ服を着させられ、カップルになるための指導をうけ、パーティーなどでその相手をみつける。

他にもルールはいくつかある。
森で行うハンティングで独身者を捕まえると、猶予期間が1日増える。
○○行為は禁止。恋愛の妨げになるから。したものは厳しい罰をうける。


題名「ロブスター」というのは、主人公デイヴィッドが選んだ生き物。カップルになれなかったら、ロブスターになりたいと…
ホテルで、足の悪い男(ベン・ウィショー)と滑舌の悪い男(ジョン・C・ライリー)と友達になるも、恋の相手はなかなか見つからない。
この世界の恋愛では、“共通項”が最重要ポイントであるらしい。
一刻と一刻と残りの日々が少なくなるデイヴィッド…

色々あり(ネタバレゆえ、割愛)、脱走をはかる。そこでであったのは、独身万歳なレジスタンスたち。
そこで彼はある近視の女性(レイチェル・ワイズ)と出会い、恋に落ちる。
が、このレジスタンス達のリーダー(レア・セドゥ)は、恋愛を一切認めておらず…

という作品。

ストーリーをざっと読んでもらってわかるように、かなりシュールな世界観。
ぼっちにとったら、ホラーとしか言えないような世界

その世界で、主人公が奮闘するのだが、話の流れや対応がやけに淡々としている。
ホテルでも、森でも、理不尽な世界が横行しているのに、大概の人々はそれに従順に従っている。
リアルなリア充たちは、メインの世界で普通に暮らしていて…

ホテルの人々は、リア世界を求める。レジスタンスはホテルを敵対視するくせに、リア世界には反抗せず物資などを調達する。
なんとも不思議な違和感と気持ちの悪いバランス。

そう。この映画はまさしく、微妙な笑いの間合いと、微妙なもどかしさと、両極端な世界でのぎこちない、微妙なバランスなのだ。

そもそも、主人公は、“ロブスター”になりたいというような微妙さ(笑) 理由は、100年以上生き、死ぬまで精力が衰えないから。が、彼は精力ムンムンの男ではなく、女性に頑張ってアプローチするもののうまくいかないような中年メタボ(笑)そんな彼が淡々と、黙々と、たいして慌てずにストーリーを進めていくのです。
この話、ある意味ホラーでもあり、結局のところ、ブラックユーモアのかなりきいたコメディだ。そして、ラブストーリーだ。

また、支配というもの。政府の勝手で理不尽な政策。それは許すまじ事だ。が、うやむやにそれに流される人もまたその仲間ではないだろうか…一方、反政府であるような集団にも、例えば連合赤軍や様々なカルト宗教軍団のような、無情な圧力と無秩序がある。
ぶっちゃけ、どっちもどっち。実際の世界の様々なところで、その、どっちもどっちが繰り広げられている事を考えた。

コメディの目線でいったら、この微妙な空気感と笑いは、微妙なタイミングともどかしさから発するものだ。気まずい“間”。からの笑い。多分、観た人それぞれに違う「ふっ…」っという笑いがあり、そのタイミングも違うだろうと思う。

ラスト、ぎゃぼーーーー‼ってなる…し、うわぁ……ってなる。うむうむ…ともなる。なんか、後から色々考えもするけど、見ている時は淡々としていて、でも飽きず(いや、飽きる人もいると思う)、微妙なグロと微妙なエロと世界観が風刺であり、なんとも形容しずらい作品。変な映画。が、私は好きだ。
MikiMickle

MikiMickle