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グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
4.0
素晴らしい音楽 愚かしい戦争

音楽の生まれる瞬間がゾクゾクした。「ムーンライト・セレナーデ」をアレンジして完成させる、あのシーン、あの魅せ方、聞かせ方が一番ゾクゾクした。
他にもたくさん。
あの時代に生きていた人だから当たり前なのだけど、本人が!本人が出てきて普通に演奏!曲やソロが終わるたびに感嘆の声や拍手を思わず鳴らしそうになったのだけど、しーんとした映画館だったので自重した。ああ…痺れた……なんてかっこいいんだ。だって、サッチモ、シーン・クルーパ、モダネイヤーズ、フランセス・ラングフォード、マーティー・ナポレオンやベイブ・ラッシン……はあぁ……

私が英語が理解できないのが悪いのだけど、字幕で観ることの弊害…。音楽が流れるたびにいちいち曲名が表示される。ここまで有名な曲ばかりなのだからこんなことしなくてもと思いつつ、知らなかったら親切かなあ、とモヤモヤしながら見ていたが、最後はほんと、蛇足に下駄まで履かせたようなクレジットにはホトホト萎えた。例え、「茶色の小瓶」という曲を知らなくても、話の流れで、ヘレンの表情で、ミラーの妻を想うその気持ちから、こんなことしなくったっていいじゃない、と切なさに胸が一杯になりながらも毒付いていた。

それにしても、ジェームズ・スチュアートはなんて多彩なんだろう。トロンボーンもピアノも長年慣れ親しんで演奏してきたかのようだった。検索の仕方が悪いのか、彼が本当に演奏していたのかどうか分からなかったのだけど(鍵盤に指を置く仕草、体重の掛け方から、ピアノの音は吹き替えではないと思うのだけど…。吹き替えだったとしても、譜面にペンを走らせながら即座に振り返ってコードを押さえられてて、ゾクゾクした)、素晴らしかった。なんかもう、グレン・ミラーそのものだった。

そして、妻役のジューン・アリソンがとっても素敵。あのハスキーな声と周りも明るくなる笑み、"honestly"(呆れた人)の言い方が好き。首の後ろに手をあてて微笑む姿がまたキュート。あの白と黒のスカートで踊る姿も綺麗だったなあ。夫の夢とサウンドを誰よりも信じていたヘレンという人が、彼女の好演でより際立っていた。

ヘレンと結婚していなかったら、グレン・ミラーという人物は世に出なかったのだなあって映画の2人を見て感じた。
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