ひ

人生タクシーのひのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
4.2
2015年11月29日
身震いしたよ。東京フィルメックスにて
ベルリン国際映画祭で金熊賞
今年はイラン映画をできるだけ見る。それの恐らく最後の作品になるだろう。監督自らタクシーに乗って、乗り合わせたお客との話を映画にする。簡単な設定なのになぜこんなにも面白いのだろうか。ジャファル・パナヒ監督は政府から出国禁止とされて映画祭では、出演者の姪 ハナ・サエイディさんが出席したという。
タクシーの窓がちょうど観客が見るスクリーンと重なる。POVが一時期はやったがそれの応用verみたいだ。特にハナ・サエイディが出てきてからタクシー内の温度が一気に上がる。学校の授業のためにカメラでタクシー内を撮影する。狭いタクシーの中で視点がいくつも増える訳だ。車載カメラはいつも中立で現実のみをひたすら撮影し続ける。彼女のカメラは現実と彼女が撮りたいと思う人の意思が入った画になる。観客は車載カメラの映像しか見ることができない訳だが、彼女は自分の視点とカメラから見るカメラがあるからこそ直視できる現実と2つの視線をもつ。これが凄い。タクシーという閉鎖的な空間で、一瞬現実かこれがフェイクなのか分からなくなる。
タクシーに乗り合わせるお客も監督と同じ境遇だったりと気をおけない。最後のシーンで見る側の度量が試されると思った。
やっぱり凄いよパナヒ監督。全国上映されることをのぞみます!
ひ