YokoGoto

オーバー・フェンスのYokoGotoのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
3.6
ーこの蒼井優は、“最優秀主演女優賞”クラス!ただ、後半しりつぼみー

先日、(日本版)アカデミー賞なるものの発表があったばかり。本国はともかく、日本版となると一気に関心がなくなり、どちらかというとキネ旬のランキングの方が、自分の好みに近いのでどうということはないのだが。ちらっと、主演女優賞のノミニーを見た。

恐らく、あのノミニーの中で比較しても、この蒼井優さんの演技は別格にいい。『女優 蒼井優』という固定概念もすべて脱ぎ去った、役柄の中に溶け込むという演技をみせつけているからだ。

日本の女優さんは、多くが、自分のイメージの延長。
全く別人にもならないし、事務所の方針なのか、メジャーな女優は激しいベッドシーンもない。(まぁ、本作もあれだが。笑)映画を通して、リアルな人間像を観たいのに、結局『フィクションだよね』と透けてしまうあたりが残念なのである。

本作、オーバー・フェンスの蒼井優は、そういう意味では清々しい。
主人公の壊れ方も、蒼井優らしさを残さないし、かといって全くの素人っぽくもない。実にフォトジェニック!!

最初、なんとなく地味で平坦な印象で始まるのだが、蒼井優がでてくるあたりから、グッと引き込まれる。函館の小さなキャバクラのホステスという役柄なのだが、完全に洗練されていない、なまり(方言)で話すキャバ嬢が、なんとも魅力的に映る。

もちろん、オダジョー主演の映画ではあるものの、演技・存在感という意味でも、蒼井優がもっていった映画でもある。

ただ、映画全体の展開としては、“起承転結”でいうと、転・結あたりで、しりつぼみになった感じが否めず、なかなか残念な感じであった。
それと、脇キャストにメジャーどころを使いすぎているようにも思う。イメージの強い俳優さんが、逆に映画の足を引っ張っていた感じが否めない。(特に、職業訓練校のメンバー)

佐藤泰志さん原作の物語なので、先発の『そこのみにて光輝く』の臭いもプンプンする。一見、傷ついてみえない男女の、底をえぐる感じ。その表現は、呉美穂監督とは、また違うタッチで描かれ、笑い部分はちょっと面白かったが。

あと、演出部分では、ダンスシーンはちょっと浮いている感じが否めなかったかな。

普通の日常の中で蓄積される『絶望』。
人は、絶望の中に光を見つけて、そこから飛び越えて生きていくのである。
いや、光を見つけるというよりも、光に気づくのであろう。
そして、光に気づくのは、自分の生きる力でしかあり得ない。
YokoGoto

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