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この世界の片隅にのakqnyのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
誰しも人は存在することに意味がある。生きることに意味がある。と思う。
ちょっとくらい人に迷惑かけても社会的に役に立たなくても、あるいは人を救い社会から讃えられても、生きている今この一瞬は誰しもに平等にある。
今も昔も生きてる環境が変わっただけでその一瞬を生きることや存在の価値は変わらないはずなのに、四肢があり心身健康で雨風を凌ぎ安全に寝られる家があり、毎日3食まともなご飯を食べられている自分は、何のために存在するのだろうかと考えてしまう。なにも社会に役立つ必要はなく、自分のためでもよく、とにかく生きることが意味になるのだ。と思い言い聞かせるのと同時に、それでも今この瞬間の自分の存在に与えられた意味はもっと大きくあるのではないかと考えずにはいられない。
この作品を見るとそう思う。


生活のすぐそばにある戦争の姿は何とも穏やかで、涼しげな夏の晴れ空を爆撃機が飛び、対空爆雷の煙は夏祭りを知らせる空砲のようだった。畑も用水路も、機銃掃射を受けても何事もなく太陽を反射して輝いていて、死のイメージとはまるでかけ離れた明るさが恐ろしかった。
戦争はいつでも生活の裏側に潜んでいて、ある時突然牙を剥くのだと思う。

生活と戦争、ウチとヨソ、偶然と必然、男と女、生と死…。
見るたび、この2時間に詰め込まれたものをもう一度紐解く時間が欲しいと思うのだけど、最初のあの瑞々しい感受性はもう戻ってこないのが悔しいなぁ。
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