デニロ

この世界の片隅にのデニロのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.5
予告篇を一度見たことがある。見栄えのしない女の子が出て来て何か喋ろうと名を名乗った。「のんです。」ああ、『あまちゃん』の能年玲奈だ。何かの記事で読んだ。声優をするんだとか何とか。この作品だったんだ。でも、なんだか目や鼻が変わった。一目では彼女と気付かなかった。

140分の作品だというので、長いな、と少し滅入りながら既に満席の案内のある劇場入り口を入る。立見席はこちらにお並び下さいとスタッフが案内している。公開館が少ないから混雑しているんだろうけど、珍しい光景だ。

作品は日記風に綴られていてしかも四コマ漫画の起承転結があって声を出して笑ってしまう頻度は高い。そんなわけで長さを感じることは全くない。

広島の女の子が呉にお嫁にいって云々というお話で、昭和一桁から戦争に突入し敗戦、そして戦後の一変した日本を描いている。広島、呉の話なので、空襲、原爆の話も挿入されるが、先に記したように日記風に淡々と綴られている。ただ、敗戦の詔勅をラジオで聞いて負けたのは誰だといきどおった主人公が声高に叫ぶ場面にメッセージを感じた。

最近山田洋次が昭和初期のモダンな風俗をよく描写しているが本作でもそれは描かれている。今よりも情報量は少なかったんだろうけれど、豊饒な文化を持っていた気がする。今はどうだろう。取捨選択しなければならないほどの情報はあるけれど、それが豊かなものなのかどうか。
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