KANIO

この世界の片隅にのKANIOのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
戦時下における庶民の生活や風俗を、主人公"すず"の視点で描く「日常系アニメ」。
従来の戦争系映画のように重く暗い雰囲気に依存せず、苦しい環境下でも人々が力強く生活し、楽しい事や哀しいことに一喜一憂する”何気ない日常”を描く。

ツラくて悲しかったり暗く気分が沈むシーンもある中で、その中にもキッチリと笑いが挟まれる。そうして蓄積されていく感情の連続の中で、気付いたら自然と涙が落ちている、そんな作品。

どんな世界でも、何気ない事が楽しくて、大切な人がいて、ご飯が美味しくて、それらに対になる感情があって。
世界の片隅で細々とそれでいて力強く描かれる人間模様に、死ぬほど泣いた。

喪失とは時に自分の観る世界を変えてしまうが、それは同時に誰かの救いにも成り得る。
"不条理"に対して"在り方"を見詰めていくこの作品こそが今を生きる全ての人達のミームであり、凄まじい受容の力に満ち溢れた大傑作。

のんさんの声優としての演技力が素晴らしいのも然ることながら、なによりも映画に関わらず「表現」を世に打ち出す手法としてのクラウドファンディングに可能性を感じずにはいられない。
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