AkioSogo

この世界の片隅にのAkioSogoのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
映画館で鑑賞。

北条すずさんの人生を通じてあの戦争を戦っていた日本を垣間見た気が
しました。実際、戦艦大和が呉港に入港した日付を特定してその日の
天候も調べたり、当時すんでいた人から聴き取りして街の風景を
細かく書きこんだりして、あの戦争の時の呉の街を映像にしようと
していたということに嘘はないでしょう。宮崎駿監督作品や
君の名は。みたいに映像にならないようなところまで細かく書きこんで
リアルな映像を描くアニメになっていたと思います。

北条すずさん、広島で生まれ呉に嫁ぐ。
呉に行った時点で戦争が日常になっていた(早速配給当番になるなど)
のですが、それでも北条家の人たちと懸命に生きていくすずさん。
そして、そんなすずさんにだんだん迫りゆく「戦争」。
あっというまに奪われる、すずさんの右手と姪が象徴する「日常」
それまで廻りに流されて生きてきたすずさんが、「戦争」に
翻弄されるなかで自分の居場所を考えていくようになります。
狂っていくようにも見えましたね。

映画だからこそ容赦なく迫り来る「8月6日」と「8月15日」。
玉音放送でそれまで信じていた正義を奪われて泣いてしまう気持が
はじめて真に迫ってきたように思いました。

この映画に「反戦思想」はいらないでしょう。そして、
それだからこそあの戦争を考え、あの悲劇をどうやってさけるべきか
考えるのに最適だと思うのです。

名古屋ではミリオン座のみなのが残念です。
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