けんぱじ

この世界の片隅にのけんぱじのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.6
また角度の違うヒロシマ。

広島市で生まれ育ち、呉へ嫁いできた、純粋で心優しく、のんびり屋さんのすず。
第二次大戦が刻々と身近に迫り来る中でも、材料の少なくなる家族の食事を工夫したり、得意の絵で姪っ子を楽しませたり、前向きに生きている。

ある日、出先の街で空襲に遭い、防空壕で難を逃れ、外に出た時に地中に埋もれた不発弾が時限爆弾と化し爆発した。
姪っ子とすずの思い出の詰まった“右手”が吹っ飛んだ…
肉体の痛みだけではなく、心の痛みがすずを苦しめる。
そして、昭和20年8月6日…
故郷の広島市に原爆が投下された。
里帰りの支度をしていた、すずと義姉のいる呉では激しい光と地響きだけで何だかわからない。
外で義父が山の向こうの何やら恐ろしげに立ち昇る雲を見て叫んでいる。
故郷がどんな状況なのか、わからないまま、日本降伏を伝える陛下のお言葉のラジオを聴いた。
共に聴いていた近所の奥さんの「負けたの?」の言葉にすずの怒りが弾けた!
「何で最後まで戦わないの!?
私はまだ左手も両足も残ってるのに!」と。
何の為に多くの犠牲を払って、私達も一緒に戦ってきたんだ!?
父も母も兄も姪も“右手”をも亡くしても、日本の為だと信じていたのに…
すずの心の叫びが辛かった…

直接的に関わっていない人達でも、幾度となく繰り返される空襲に苦しめられたり、家族・親戚・友人・ご近所の人々が戦死したり、食糧や娯楽の自由を制限させられたり、住む家が焼け落ちたりして全ての人が苦しむ戦争。
戦争は日本だけに限られた事ではないけど、世界で唯一、原爆の被害を受けた日本国民として、未来の日本人には伝えていかなくちゃならない。
「2度と繰り返してはいけない。」と

主人公すずの声を担当した、のん(能年玲奈)の淡々とした中に優しい女性味のある喋りでとても感動した。
初めて聴くコトリンゴの歌声も個性的で心に響いてくる。
何とも味のある2人の声がまだ頭の中に残っています。
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