観たあとは3時間ぐらい、なにをするにも「うーん…」とか「ふぅー…」とか、抱え込んでしまったものを吐き出せないといった感じのため息を吐き続けました。
暫く経って振り返ってみると、たぶん自分はこの映画を観てショックを受けたのだと思います。
わたしとあまり歳の変わらないすずさんが、戦時下といっても穏やかに流れていく時間のなかで、当たり前のように恋をして、そして恋に悩む。暮らしは相当貧しいですが、ご近所さんとのコミュニティには現代にない温もりを感じます。
人びとの営みは確かにそこにあるのに、彼方此方に戦争の影が見える。そのことになんとも言えない恐怖を感じるのです。そしてその戦争が様々なものを『一瞬』で奪っていってしまう。
すずさんたちのような人にとって、「ひもじさ」などの、戦争が日常に及ぼす影響にいくら長く耐えたって、本当に大切なものを奪われてしまうのは一瞬のことなのですね。一瞬で何もかもが変わってしまうから、だから「あのときもしも…」とあとから後悔ややり切れなさが襲ってくる。愛しい営みが永久に続いて欲しいというわたしたち(観客)の祈りを嘲笑うように奪われていく命たちに、観ていてショックを受けたのです。
セリフですべてを語るような映画ではありませんでしたので、観た人が何を感じるかが大切な映画だと思うのですが、わたしはただただ虚しさを感じてしまいました。それは、すずさんたちがあまりにも懸命にその時代を生きていたからこそ、その姿が愛しかったからこそ、感じてしまった虚しさです。戦争とは一体なんなのでしょう。様々なものを壊し、奪い、穏やかだった人間の性質を変えてしまう戦争ってなんなのでしょう。