そぶ918

この世界の片隅にのそぶ918のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.8
戦争映画というのはそのテーマの性質上、どうしても悲しくなったり、悲しい、重いが先行してしまい気持ちがおもくなってしまうのですが、この世界の片隅にという映画はたしかに第二次世界大戦、原爆を描いているので重い事は重いのですが、すごくイキイキしていて今までにない体験をすることができました。

そのイキイキしてる要因は大きく3つあると思います。
まず主人公のすず役の声を演じているのんさんの好演。まるですずさんというキャラが実在しているという感じがして、すごく良かったです。

あとは絵柄。
原作の絵を崩すことなく、のほほんとした日常を描き、さらにすずの得意な絵を実在している因幡の白兎や呉の風景を照らし合わせているシーンとかは鳥肌が立ちました。戦争のミサイルもあえてカラフルな水彩画のタッチにして、爆発を描くシーンは戦争という非日常を表現していてすごいと思う反面、戦慄が走りました。
色がなくなるシーンが映画の重要なシーンで描かれるのですが、絵柄とは対照的にトラウマになるほど怖かったです。

あとは何と言ってもこの世界観です。
戦争という悲観的な場面でもあくまで日常を大事にしてどのキャラクターも戦争のという恐ろしい中でも、前向きに淡々と過ごしていることに強さを感じました。戦争で変におかしくユニークさを狙ってしまうと駄作になってしまうと思うんですが、そのバランスが絶妙です。

変な意味ではなく、初めて戦争をテーマとした映画で泣かなかった。というか泣けませんでした。こんな戦争映画は初めてです。
火垂るの墓、はだしのゲンと戦争のアニメで傑作が多いですが、この作品も仲間入りしたと思ってます。

私ごとですが、あまりにも世界に入りすぎてしまい、先日、呉に旅行に行ってしまいました…(笑)

あえで苦情を言えば、この絶対的な作品が出てしまったため、君の名は。や聲の形など2016年の傑作アニメ映画が全て霞んでしまったこと。
あとクラウドファウンティングして、おれもエンドクレジットで名前入れておけば…と勝手に後悔してます(笑)

じっくりどの年代にも観て欲しい作品です。
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