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この世界の片隅にのyukinoのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0
戦争という悲惨な世界がすぐそばにありながらも、その日その日をただただ生活していた人々。

70年たったわたしの日常からすればキツイ生活のはずなのだけど、みんな当たり前のように穏やかに生きている。

戦争は確かに悲惨なことなのだけど、あまりにもふつうで、どこにでもありそうな日常(物質的ではなく精神的に)が描かれていたことに驚いた。

家族が死んだら、今だと大ごとだと思う。絶望して、涙も枯れ果てて、心身ボロボロになって。

その絶望を反動に前を向いて立ち上がる姿や、愛する人を失った悲しみに打ちひしがれている姿にみんな感動したりする。

でもこの世界では死という現実が当たり前に側にありすぎて、みんな悲しみこそすれ、家族の死をスッと受け入れてしまうのだ。

これが戦争。これも戦争。

安らかな日常を続けるために笑って過ごす家族という穏やかな画の背景には、
死という当たり前の現実がいつもある。

人々のたくましさや愛といった温かいものと、悲しみが麻痺した世界という冷たいものが入り混じった複雑な感覚になった映画だった。
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