このレビューはネタバレを含みます
主人公のすずちゃんが、鈍感で、感情が表に出なくて、でも無意識には色んなことを感じているように感じた。
不器用で、ぼーっとしている女の子というかんじ。
戦争が悪化するにつれて、感覚も感情も表現も全部鋭敏に激しくなる姿が印象的だった。
すずさん目線で描かれているのだけれど、基本的に、子どもみたいにすごく純粋だからこそ、音も匂いも感じることも、すずさん目線ではなく自分目線で見ることができた。
遊郭にいるリンさんの「誰でも、この世界でそうそう居場所はのうなりゃせんのよ」という言葉が残っている。
ほんとにある意味ではみんな一人で孤独なんだなって感じた。
すずさんが昔いっしょになりたかった男の人が来た時、戦争で、もう会えないかもしれないからということで、旦那さんが話す時間をもうけたのが、それがどろどろしていてリアルだった。
一方で旦那さんも昔いっしょになりたかった人との描写もあって、綺麗事がなくてすごく現実的で、好きなシーンだった。
いま核家族化が進んでいるのもあって、結婚した人、好きな人をいちばんに幸せにするのが美徳のような風潮があると思う。
でも私はずっとそれは疑問に感じていて、好きな人じゃない誰かの為に、少しでもいいから考えなければならないと思う。
一人ぼっちの置いていかれるひとが存在してしまう。
この映画は、戦争中という時代背景もあるけれど、男女も大人も子供も関係なく、助け合って愛情を持って支え合う描写が多い。
そんなふうに世界が進んでいくと良いなと心から感じた。
すずさんが、「周作さん、ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて。ほんでも離れんで、ずっとそばにおって下さい」
というのだけれど、物理的なものやすべてとっぱらって、人対人としての言葉で、すごく心に沁みた。