勝手に始めた、「テスト期間も終わったし、いい日本映画にたくさん出会おう!キャンペーン(?)」第一作目。
「言わないこと」で、より伝わる物語がある。
人は誰かに言おうとしたこと、言おうとしなかったことの両方で形づくられるのかもしれない。
中野監督のインタビューに「人と人の関係性が先にできてから、物語ができるのだ」という言葉があった。
ひとつひとつのセリフが、なんとも不器用に人間を表現してる。「大好き」なんて言葉を心から吐くドラマチックな人物は1人も出てこない。でも私たち観客は、スクリーンに映るみんなの「愛」を痛々しいほどに受け取る。この言葉の周りくどさが最高に愛おしかった。
なのにどのシーンをとっても、無駄な言葉が一つもない。さらっと受け流しちゃうような、日常的なセリフがじつは伏線だったりして。そこにリアルな、湧き上がるような感動があった。
特に好きだったのが、いじめられて絵の具だらけにされた安澄と、会いにきたお母ちゃんのシーン。
「数えたら11色あった」
「…そのなかで、安澄がいちばん好きな色は?」
冒頭のこのシーン一つとっても、この親子がどんな関係性なのか、そしてそれぞれがどんな価値観を持って生きているのか、想像力を掻き立ててくれる。
愛と人間と、人生の哲学がたくさん詰まった映画でした。