KARIN

湯を沸かすほどの熱い愛のKARINのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
3.8
勝手に始めた、「テスト期間も終わったし、いい日本映画にたくさん出会おう!キャンペーン(?)」第一作目。

「言わないこと」で、より伝わる物語がある。

人は誰かに言おうとしたこと、言おうとしなかったことの両方で形づくられるのかもしれない。

中野監督のインタビューに「人と人の関係性が先にできてから、物語ができるのだ」という言葉があった。

ひとつひとつのセリフが、なんとも不器用に人間を表現してる。「大好き」なんて言葉を心から吐くドラマチックな人物は1人も出てこない。でも私たち観客は、スクリーンに映るみんなの「愛」を痛々しいほどに受け取る。この言葉の周りくどさが最高に愛おしかった。

なのにどのシーンをとっても、無駄な言葉が一つもない。さらっと受け流しちゃうような、日常的なセリフがじつは伏線だったりして。そこにリアルな、湧き上がるような感動があった。

特に好きだったのが、いじめられて絵の具だらけにされた安澄と、会いにきたお母ちゃんのシーン。

「数えたら11色あった」



「…そのなかで、安澄がいちばん好きな色は?」

冒頭のこのシーン一つとっても、この親子がどんな関係性なのか、そしてそれぞれがどんな価値観を持って生きているのか、想像力を掻き立ててくれる。

愛と人間と、人生の哲学がたくさん詰まった映画でした。
KARIN

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