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湯を沸かすほどの熱い愛のSugiのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
3.9
母の強さと無償の愛が周りの人間の心を動かし、そこに血の繋がり等形式的な関係は必要ない。

娘(杉咲花)は高校でいじめを受け、朝学校に行くことを拒否する。そこで宮沢りえ演じる「お母ちゃん」の教育方針は「逃げるな、学校に行かなきゃダメ。立ち向かわないと」。前時代的で母の独善を美化しているとも捉えられかねない脚本は賛否両論あり得るが、個人的には全然アリ。
「この子なら必ず克服できる」と心から信じる気持ちはもちろんのこと、母は娘のみならず父(オダギリジョー)や前妻(篠原ゆき子)、途中で出会ったバックパッカー(松坂桃李)を中心に、場面場面で出会う人々との交流全てにおいて、愛情が根底にあると感じる。

彼女の一本筋の通った強い信条や価値観は到底真似しうるものではなく、娘も「私はお母ちゃんとは違う」と自身を母と比べ、卑下し、自信をなくす。ただ一連の事件後の「お母ちゃんの遺伝子、ちょっとだけあったみたい」がこんなにも切ないセリフになるとは想像もしていなかった。

メインアクターの演技は非常に素晴らしく、宮沢りえと杉咲花の演技は特に光る。またオダギリジョー演じる父の、不器用で頼りなく自信がないが何とか家族の力になりたいと願うキャラは、クズなのに憎めない面白いキャラ。
所々眠くなってしまうシーンはあったものの、俳優陣の実力が作品のクオリティに大きく貢献している。ただこの中野量太監督作品はまた見てみたくなった。
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