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明け方の若者たちのSugiのレビュー・感想・評価

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
3.5
「明け方の若者たち」というタイトルが全てを表現しているように思う。
仲間たちと共に、好きなように無責任に語り合い、朝まで飲み明かしたこの時間は、あまりにくだらなくどうしようもない時間に思える。だが、思い返せばこの時間は20代前半の学生の若さゆえにのみ手に入れることができる、あまりに儚く美しく、かけがえのない時間だった。公園で缶チューハイ片手にたむろし、始発に合わせて日の出前に駅まで歩く。今しか過ごせないこの時間。世界にはまるで僕らしかいないように思えた。そんな一節が似合う。

一応本作は「青春」映画に包含される筈だが、「青春」とはいつか終わりが来るからこそ美しいものなのだろう。前半は若者が抱く理想、後半はその後直面する現実、この二つの場面と、そのギャップが描かれる。楽しい瞬間も、いつか終わりが来てしまう、手持ち花火のシーンは印象的だ。

作品中盤に、理想と現実が一転するどんでん返し的シーンが現れると、主人公の僕と彼女に対する見方が一変する。しかし、そこには変わらないものの存在も確かに感じられる。決して空虚な関係性ではない、何か。少なくとも、一緒にいた数年間で2人が抱いた感情そのものは、間違いなく本物だろうと思う。

作品の作り方としては、回想シーンが素晴らしかった。マカロニえんぴつのヤングアダルトも、改めて歌詞をよく見てみると、本作との関連性が大きかったことに気がつく。
楽しそうなグリコのシーンと、餃子の王将でのクイズのシーンは個人的にお気に入り。
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