一般的には”汚れを洗い流す場所”である『銭湯』だが、この作品では、家族の再生、親子の愛を象徴する舞台として、『愛を沸かす』場所、『身体と心を回復する』場所として描かれる。
ストーリーは”余命宣告を受けた親が子供に何をするか”というよくあるテーマだが、だらけた間などは一切なく、全てのシーンに意味があり、それでも観てて疲れない、
とても観やすい作品。
個人的に面白いのは、母親の「一般的に正解ではない愛」と杉咲花演じる娘の安澄の成長。
余命わずかの母親が1人娘にすること、
いじめを受けて行きたくないと主張する娘を無理矢理学校に行かせる。突如いなくなった父親、更には連れ子の新しい妹まで連れてくる。
これは一般的な正解とは言い難い。しかし、双葉と安澄の間では『正解』となって、安澄の成長を支えていく。
双葉が『娘』としてではなく、『安澄』という1人の人間として強く向き合っていることがわかる。
最初母娘が2人だけだったのが、双葉によって、だんだん関わる人が増えていく様子が、ノスタルジーを感じる銭湯の風景とともに心地良く描かれる。