Goach

バンクシー・ダズ・ニューヨークのGoachのレビュー・感想・評価

4.0
「公共物の破壊行為に価値が出てしまう」矛盾がNY中に駆け巡る。

新進気鋭の正体不明グラフティーアーティスト、"バンクシー"を追ったドキュメンタリー映画。作品のモチーフをNY全体にした「ゲーム」にNY市民が右往左往した1ヶ月間を記録した映画。

「NYのどこかにある」という情報のみ公開され、こっそり完成させた"落書き"はバンクシーのwebサイトにアップされ、市民がどこにそれがあるのかを探し求める。SNSを駆使した情報戦となり、彼の一挙手一同に市民が動き、それ自体がアートになるという壮大な試み。

どんなに作品価値が高くても"落書き"には変わりないため警察は犯罪と結論づけたり、見つけた瞬間自分の物にしてしまう人がいたりと、対象が公共物だからこその人々の動きが面白い。

本作の秀逸なところは、カメラマンは特におらず、市民が撮影した動画を繋ぎ合わせて映画を構成してるところ。あくまでも市民目線で、バンクシーのイタズラを客観的に描き、それを良くも悪くも表現しておらず、観客に判断を委ねているようです。

僕は「無価値なモノにでも特別な刻印をすれば、価値が上がるその滑稽さ」をバンクシーがあざ笑いながら世界中に伝えているように見えました。

偉大なアーティストを褒め讃えるように、劇中の音楽やグラフィックが一々格好良くて、それまた痛快です。

ストリートカルチャーやシティーボーイカルチャーに興味がある方にはとてもオススメ。
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