SatoshiFujiwara

美わしき歳月のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

美わしき歳月(1955年製作の映画)
3.5
一見いかにも昭和中期の普通のメロドラマのように見えるけれども、ここには後年の小林正樹的な要素がすでに表れている。

戦争によって精神に落とされる深い傷と影(これらはほのめかされるだけだが)、それによって戦後の生活が微妙に歪んだものに変容していく。その空虚な空気。そこから社会、人間への不信感と断絶が生まれ、しかし最後には信頼はギリギリのところで回復される、という主題が見え隠れする。個人の恋愛の話ではなく、ここでのテーマが社会的な疎外なのは明らかだ。つまり、小林正樹は小林正樹である。後年の、あの完成されまくった『切腹』や『上意討ち』に比べてたるい印象は否めないが、小林正樹を知る意味では必見だろう。
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