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ハッピーアワーのclaireのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.5
出てくる男が例外なく気持ち悪くて、先日の「偶然と想像」評で宮台真司が監督の「女になりきりたい願望と、女になりきれない落胆」について書いていたことはあながち突飛ではないと思う。図式的すぎるほどに男たちが言語=法=社会に閉ざされている一方、女たちの葛藤の次元は、そこからどう闘争=逃走するか、もしくはなりすますかであって、政治的社会的な正しさよりも、存在論的な美しさやに価値を置く。ネットや学校の噂社会に囚われた息子を説教する父親もまた別のレベルの社会に閉ざされており、そこに異議を申す桜子と姑が喰らわせた拳骨は極めて痛快(なおかつユーモラス)。それを考えると鵜飼の存在が奇妙であり、ある種過度に規範から外れた人間もそれはそれで気持ち悪く映っている。身体性ワークショップのギリギリ絶妙な匙加減の気持ち悪さ(両義的な意味で)がめちゃくちゃリアルで笑った。宮台的に言うと「世界に開けて社会に戻る」であり、千葉雅也的に言うと「イロニーから折り返して、行き過ぎないユーモアへ」を体現しているように見えて、これは普通に気をつけなきゃな、と。「キモい」とかいう言葉を使うと反射的に不快感を示す人もいるけど、恋愛・性愛において、存在論的な「キモさ」とその感覚的な次元は、言語や法に囚われない美学的な問題として重要な指標。それで言うと濱口作品の男はだいたいキモい。というか、それはそもそも恋愛問題において人がキモくなってしまうという避けがたいことをちゃんと映していることでもある。
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