とむ

ハッピーアワーのとむのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
3.9
友人、夫婦、恋人、親子、兄妹、上司と部下、名前も知らない他人。人間関係にはそれぞれの状況に応じたいろいろな形がある。
穏やかさと均衡を保っていたそのつながりも、ふとしたきっかけから糸が絡み合うようにたやすく乱れてしまう。人と関わり合うということはこれほどまでに困難で苦しみを伴うものなのか。
忘れかけていた胸のうずきを思い出して人の心のもろさに暗澹とした気持ちにさせられたし、それでも誰かを求めずにはいられない人間の悲哀もやる方なかった。
それならいっそのこと、不器用な人間は他人との親密さに望みなど抱かずに自分の心の内側に閉じこもって生きていくほかないのではないか。そう考えさせられて鑑賞後はとても気分が重くなった。

ほとんどの俳優に演技の経験がないこともあり、全体を通して台詞が棒読みで生々しい感情が伝わってこない場面が多い。この演技の未熟さは自分にはマイナスにしか映らなかった。
それでも5時間17分に及ぶ上映時間の間、終始スクリーンから目を離すことはできなかった。ストーリーの展開をドラマティックに見せるのではなく、主人公たちの人生の一時にそのまま入り込んでいるかのような鑑賞体験。そのためにもこの長尺はしかるべきものだったと思える。
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